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頑張る8月のNHK [日本考]




8月のNHKさん、頑張ってますね、連夜の太平洋戦争関連の歴史掘り出しドキュメンタリー。

15日は、二・ニ六事件について、新たに見つかった海軍の極秘文書に基づくドキュメンタリーでした。

その冒頭、主旨は
【 戦前、陸軍の青年将校らが天皇中心の国家を確立するとしてクーデターを企て、政府要人ら9人を殺害した「二・二六事件」について、事件の発生から収束までの4日間を分単位で記録した極秘文書が残されていたことがNHKの取材でわかりました。

当時、海軍が記録したもので、青年将校と軍幹部の動きややり取りなどが細かく記されており、専門家は近代日本を揺るがした事件の新たな側面を浮かび上がらせる第一級の資料だと指摘しています。】

以下省略しますが、ニ・二六事件といえば、日本がどんどん軍国主義に傾いていくきっかけとなる近現代史上、極めて重要な事件ですので、興味深く視聴しました。

この事件について、海軍は独自の情報網から早々と詳細情報を入手し、その後の周囲の動きにも関心を払い、着々と海軍としての備えをしていたことがわかりました。

海軍・陸軍となると、一国の軍隊にもかかわらず、なぜか、協調性よりも独自性が強いことがわかります。そもそもこれが海軍内部の極秘文書だということからしても、おやまあ、軍というのはそういうものなのかと思わざるを得ません。

5.15事件や2.26事件のような軍隊の一部が起こすクーデターは、否が応でも国の政治を変えますね。成功すれば軍事政権が誕生しますし、鎮圧しても、鎮圧するのは軍隊ですから、軍人の発言力が増し、民間人は次第に物が言えなくなります。

こうした動きはあってはなりませんね。

16日は7時と9時のニュースで次の報道をしました。

【 NHKは初代宮内庁長官が5年近くにわたる昭和天皇との対話を詳細に書き残した「拝謁記」を入手しました。

その記述から、昭和天皇が、戦争への後悔を繰り返し語り、終戦から7年後の日本の独立回復を祝う式典で、国民に深い悔恨と、反省の気持ちを表明したいと強く希望したものの、当時の吉田茂総理大臣の反対で、その一節が削られていたことがわかりました。

分析にあたった専門家は「昭和天皇は生涯、公の場で戦争の悔恨や反省を明確に語ったことはなく、これほど深い後悔の思いを語ろうとしていたのは驚きだ」と話しています。

「拝謁記」を記していたのは、民間出身の初代宮内庁長官だった田島道治(たじま・みちじ)で・・・(省略)

吉田総理大臣が削除を求めた一節は、
「国民の康福(こうふく)を増進し、国交の親善を図ることは、もと我が国の国是であり、又摂政以来終始変わらざる念願であったにも拘(かか)わらず、勢の赴くところ、兵を列国と交へて敗れ、人命を失ひ、国土を縮め、遂にかつて無き不安と困苦とを招くに至ったことは、遺憾の極みであり、国史の成跡(せいせき)に顧みて、悔恨悲痛、寝食(しんしょく)為(ため)に、安からぬものがあります」という部分です。】以下省略しますが、これをニュース番組で流しました。

NHKさんも、これはちょっと変わったのかなと思いました。

17日には、この拝謁記に基づく再現映像を交えた特集番組をやってました。ご覧になった方も多いかと思います。

知り得たことの一つは、昭和天皇は大戦の結果責任を真摯に受け止めていて、それを国民に表明することを熱望していたということで、もう一つは、それを吉田茂が都合が悪いので阻んだということです、簡単に言えば。

昭和天皇の路線で戦前戦中の悔恨や反省を表明していれば、周辺の政治家も右へ倣えして、日本の指導層が一致して、戦前戦中のよくないところを認め、再出発することができたように思えます。戦後の日本は違っていたでしょう。

しかし現実はそのような深い悔恨の心情には至らず、戦前戦中の魂胆や作為を残したまま戦後の再興が進められることになったのです。

日本の保守政治は、表向きだけ民主的な諸制度が取り入れられましたが、それを運営する政治家の志においては、戦前と大差がなかったということができると思います。

戦前、天皇を神に祭り上げ、その権威を利用して国政を行ってきた者たちが、戦後はアメリカを絶対視し、その権威を背景に、国政を操るようになったのです。

ですから自主独立の気概はありません。昭和天皇は反省すべき点は素直に反省し、改めるべきところは改めて、再び独立国として出直すことを日本国の当然の進路と考えていたようですが、為政者たちは、戦勝国アメリカに、寄らば大樹の陰で寄り添うことしか考えていないのです。

戦後、何年たっても基地や空域を提供し続け、いつまでたっても戦後が終わらない日本外交の出発点が、吉田茂のこの発言阻止にあったのです。

吉田茂や岸信介、佐藤栄作、中曽根康弘などの保守政治家や、その他右翼の大物たちが、日本が生まれ変わるチャンスを潰し、機会があったら万事戦前に戻そうと虎視眈々と狙う戦後の保守政治の流れが、この時既にできたのです。

NHKさんはここまでは言いませんよ。今を批判的に見ていませんから。しかし今の政治に危機感を抱いている人には、このとき撒かれた戦前品種のタネが、今、孫の代になって開花し実をつけようとしているかのように見えるのです。そうとわかるのです。絶滅すべき悪品種が、実は徐々に繁殖していたのです。

そんなことを思わせる番組でした。





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