現宰相の人物像 ③

〈国家主義〉

　このブログを読んでくださっている奇特な方が、アベさんのことを長々書いているので辟易なさっていることは薄々？わかります。「まだ書くの？」と思われていることでしょう。これが最後です、アベさんの人物については。
　どうしても彼の「国家主義」については触れておきたいのです。こんなためらいのない国家主義者も珍しいと思いますので。

　「国家主義」はWikipediaによりますと、
【国家主義（こっかしゅぎ、英: statism ステイティズム、仏: étatisme エタティスム）とは、国家（≒政府）を第一義的に考え、その権威や意志を第一だと考える立場のこと。】とあります。さらに
【大辞泉によると、国家主義とは、国家を、「最高の価値あるもの」とか「人間社会の最高の組織」などと見なし、「個人よりも国家に絶対的な優位性があるのだ」などとする考え方である。ブリタニカ百科事典によると、国家主義とは「国家に至上の価値がある」などと主張して、国家的な秩序や、国家による命令、自分の属する国家が軍事的に強いことなどを他の全ての価値に優先させようとする政治的な主張を指す。 国家主義的な立場をとる者、そのような思想を持つ者を「国家主義者」と言う。

国家主義は保守的なイデオロギーのひとつである。特に近代化に乗りおくれた20世紀のドイツや戦前の日本で隆盛をきわめた、とブリタニカには記述されている。反意語は、世界やイギリスなどの西欧諸国を中心とするという意味合いの、「グローバリズム」である。（グローバリズムとは、グロブブリテインを中心とした、という意である事から）

自国国家を至上におくという考え方であるがため、国家内での価値の共有などは国家を形成するにおいて重要ではあるが、（国家の利益を個人の利益に優先させるので）全体主義的な傾向があり、偏狭な民族主義や国粋主義になりがちであるとされる。】と【概説】にあります。

　国家というか、国と個人の関係を、宰相自身はどう捉えているかというと、御著書『美しい国へ』の【第二章 自立する国家】につぎの件があります。

【個人の自由と国家との関係は、自由主義国家においても、ときには緊張関係ともなりうる。しかし、個人の自由を担保しているのは国家なのである。それらの機能が他国の支配によって停止させられれば、天賦の権利が制限されてしまうのは自明であろう。】だから個人の権利は天賦ではなく、国家が保障するからこそ存在するのだというスタンスです。固有の権利ではなく、施してやっている自由にすぎないというのです。
　また、つぎの記述もあります。
【外国旅行で私たちが携帯を義務づけられているパスポートには、外務大臣の署名で、「日本国民である本旅券の所持人を通路支障なく旅行させ、かつ、同人に必要な保護扶助を与えられるよう、関係の諸官に要請する」
　との文言が明記されている。
　これは、所持者であるあなたが日本人であることを、日本国家が証明し、外国における権利を日本国家が担保するという意味である。いうまでもなく、そこでは、どこの国に属しているかということが極めて重要な意味をもつ。わたしたちは、国家を離れて無国籍には存在できないのだ。】

　国というのがいかに大切かということを読者に伝えている訳ですが、そんなことは小学生でもわかることではありませんか？国なんかいらないと大勢が言っているとでも言うのですか？主権の及ばない地域に行くときには、そちらを統治する機関に国が発行する身分証明書を持っていく、あまりにも当然の話ではないですか。「だから偉いのは国であって、個人ではない」という価値観の話ではないでしょう。日本国が立派な国であって、多くの国から尊敬されているということを望まない日本人は極めて少ないでしょう。
【国民がパスポートをもつことによって国家の保護を受けられるということは、裏を返せば、個々人にも、応分の義務が生じるということでもある。】
　はいはい、おっしゃるとおりであります。

　こんなことも書かれています。
【国家権力は抑圧装置であり、国民はそこから解き放たれなければ本当の自由を得たことにはならない、と国家と国民を対立した概念でとらえる人がいる。
　しかし、人は他人を無視し自ら欲するまま、自由にふるまうことが可能だろうか。そこには、すべての要求が敵対し、からみあう無秩序社会 ― ジャングルの中の自由があるだけだ。そうしないために、近代社会は共同体のルール、すなわち法を決めた。放埒な自由ではなく、責任を伴う自由を選んだのである。】
　法の基が憲法であることをお忘れなければ、これもおよそおっしゃるとおりであります。しかし、個人の自由か、国の統制かの二択をしているわけではないのです。国は現に存在するし、国にまったく頼らず個人で生きることも不可能に近いのです。要は、国の秩序や権限や命令が何を置いても大事なのかそうではないのか、そこが焦点なのです。
　国の存在と発展そのものが大事なのか、国民の生活や人生の充実のための便法なのか、そこが問題なのです。

　前者を尊しとする人もいますが、これは明らかに間違っています。なぜかというと、国は人が集まって作った組織です。紙に書いた権限の図です。虚構、虚像です。一方、個人は一つの命を持った実体です。
　組織は虚構といえども、個人を呑み込み、つなぎ、動かしますから巨大な力を発揮します。大蛇やドラゴン、恐竜のようになります。
　この巨大似非生物が、それ自身を生き物と勘違いし、自らの欲求を満たす活動を始めると、大変な禍が起こります。どこに起こるかというと、まずは自らの内に向かって、お前たちの生命活動より、全体としての国家（つまりワシ）の命運が大事だと、国民に無理を強いるようになります。実体である国民の生活を歪めるようになります。
　ついで、近所の巨大似非生物と、必ずいざこざが起きます、覇権を争うようになります。なぜなら、どちらも理屈を塗りたくって、似非生物がいかに似非ではなくて、個人の存在を超えた由緒正しい価値ある生き物であるかを理論武装しているからです。近隣諸国とは格が違うのですから、衝突せざるを得ません。

　こんな国家主義を隠すこともなく高らかに宣言してはばからない人が宰相を務め、憲法の改正を企んでいるのです。

　取り急ぎ更新します。ご訪問に感謝します。

コメント 12

国家主義は
＞近代化に乗りおくれた20世紀のドイツや戦前の日本で隆盛
ヒトラー、それに天皇制を利用した軍部
ドイツ、日本に顕著だったのですね

国民の持つ権利は、国からの施しというわけですか
今は国が巨大モンスターみたいになり
近所の巨大モンスターといがみ合っていますが
ここで個人の権利が呑みこまれては、また戦前の様相です
こんな宰相要りません


by majyo (2016-12-15 21:49) 

majyo さんへ
こんばんは、早速コメントをありがとうございます。
アベさんは今プーチンとの外交で点数を稼ごうとしていますが、とにかく思想が悪いですよね。憲法改正草案にモロに出てますね。
要らない政治家ですね！
by momotaro (2016-12-16 00:44) 

『美しい国へ』、読んでいませんが
安倍総理の、個人より国！
国家主義感良く分かりました。
これが、首相にとどまらず
自民党という組織が一体となって
問題になることなく国政されていくのが恐ろしい。
国民も大騒ぎしない
日本人ってこういう民族なんですかね！
アベマジックに騙されている。
by ファルコ８４ (2016-12-16 09:42) 

今朝の朝日ＴＯＰは首相「特別な制度下の共同経済活動」
日ロ首脳「率直に議論」です。
ほかに書きようが無いから見事な表現と感心しました。
まさか、プーチン大統領に手玉に取られた日ロ外交とも書けない・・・。
いままでのプーチン詣ではいったい何・・・？(金と人と時間ををかけて）
あれだけアメリカよりの言動をとりながらロシアから2島返還がいまそこみたいな話にはいささか疑問符ついてましたが・・・「あにはかるんや」でしたね（外務官僚の失策でもありましょうが）。
自分がシンガポールを視察して国内展開進めたカジノ法についての党首討論では「議員立法だからわたしに答弁の資格？責任？はないわけでありまして」だと・・・。
国会では、じょうずな舌の使い分けで誤魔化せましたが、プーチン大統領には通じませんでしたね。
ごり押し強行拙攻失策を並べ並べてそろそろ退陣でしょう・・・！
空しくも、のこるは、「うそとみせかけとだまし」だけでしたが。
人の生に対していささか不誠実だと安倍政権に感じたのは私だけでしょうか？


by SUN FIRST (2016-12-16 10:13) 

なるほど、国家主義とはね～。。。
自分が中心になってこの国を治めていくなんて大それた考えも
幼い頃に育った特殊な環境の中で身に付いたものなのでしょうか。
どちらにしても特異な人物です、少なくともマトモじゃない。。。
by トックリヤシ (2016-12-16 13:16) 

ファルコ８４さまへ
そうなんです。アベの個人的な国家主義が当たり前のように自民党の党是になり国を動かしてしまっています。
止めるのは主権者国民、それ以外にはありません。
そうしないと、また外国に諫めてもらうようになります、高い代償を払って・・・
by momotaro (2016-12-16 14:06) 

SUN FIRST さんへ
日露の首脳会談の成果については詳しいことを知りませんが・・・どうせ・・・
一時は、アベさんて、まずは集団的自衛権行使でアメリカにすり寄って安心させておいて、実はロシアにすり寄り寝技で領土問題を解決してしまうのか、もしかしたらすごい策士だなあ・・・沖縄で変なことを言っちゃって、後でアメリカに行ってトラストミーとか言った人と逆の手か？
ってちょっとばかり思ったのですが、やっぱりそんな深謀遠慮はなかったようですね。
あの人は根っからの国家主義者だから、どっちにしても最高権力者にふさわしくない人です。
by momotaro (2016-12-16 14:15) 

トックリヤシさんへ
毎度コメントをありがとうございます。
国家主義はあの人に起こった特異な現象で、マイナーだと思うのですが、自民党を席巻し、公明党を巻き込み、維新の会という別働隊を産み、今や、当たり前のように国政を動かしています。
みなさん、目覚めてください、寝てるうちに大変なことになりますよ！
って心境です。
by momotaro (2016-12-16 14:22) 

文章表現の端々に、ゴーストライターの臭いが紛々としますね。あれこれ最もらしい理屈付けして、国家は個人の上に立つという陳腐な結論を導いていますが、さらにその裏には「朕は国家なり」といういっそう陳腐な思い込みが見え隠れしているようですね。迷惑な話です。
by kazg (2016-12-16 21:46) 

kazg さんへ
> 文章表現の端々に、ゴーストライターの臭いが紛々としますね。
ですが、言いたいことはある人ですから、少しは自分でも書いたり、しゃべったりしていると思います。
国家主義に酔っちゃっているので、本当に
> 迷惑な話です。
by momotaro (2016-12-17 00:15) 

↑おっしゃるとおり、あなどってはなりませんね。言いたいことがあって、それには固執・拘泥する人のようですからね。
by kazg (2016-12-17 07:22) 

kazg さんへ、再コメ↑ありがとうございます。
今あの人の戦略を見ているのですが、なかなか用意周到で、足りないところもあるけれど、思いを実現する頭は持ち合わせていると思った方がよさそうです。やり手であることは間違いありません。
by momotaro (2016-12-17 22:03)