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『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』を読んで その22 [『日本はなぜ、「基地」と「原発」を・・・』]

   《 PART4 安保村の謎②-国連憲章と第2次大戦後の世界》(4)

   《占領継続のトリック(講話条約第6条)

〈なぜ沖縄が今になっても米軍の軍事占領状態にあるのか、また本土でも、なぜ首都圏の上空全体が米軍に支配されていて、日本の飛行機はそこを飛べない状態が続いているのか。それは日本の独立の条件となったサンフランシスコ講和条約の中に、次のようなトリックが仕掛けられているからだ。
 もともとポツダム宣言では、
「占領の目的が達成され、日本国民自身が選んだ平和的な傾向をもつ政府が成立したら、占領軍はただちに撤退する」(第12項)と明記されていた。
 サンフランシスコ講話条約にも
「連合国のすべての占領軍は、この条約の効力が発生したあと、なるべくすみやかに、かつ、いかなる場合にも90日以内に、日本から撤退しなければならない」と書かれていた。
 しかし現実には、アメリカによる軍事占領状態が継続した。それはなぜなのか、答えは上の条文の次に
「ただしこの条文の規定は、二国間で結ばれた協定〔=日米安保条約〕による外国軍の駐留をさまたげるものではない」と書かれていたからだ。
 つまり、ひとつの条文の前半で、大西洋憲章以来の「領土不拡大の原則を高らかにかかげながら、後半では、日米安保条約による米軍の駐留はその例外としたわけだ。〉

   《沖縄軍事基地化のトリック(講話条約第3条)

〈同じく領土不拡大という大原則のかげで、なぜ沖縄本島の軍事基地化というような国際法違反が可能になったのか。それはやはりサンフランシスコ講和条約の第3条に同じようなトリックが仕掛けられていたからだ。第3条の条文は非常に難解なので翻訳して説明する。この条文の前半には
「日本は、アメリカが国連に対して、沖縄や小笠原などを信託統治制度のもとにおくという提案をした場合、無条件でそれに同意する」
と書かれている。
 しかし同条後半に
「そうした提案がおこなわれるまでアメリカは、それらの島や住民に対し、行政、立法、司法上のすべての権力を行使する権利をもつ」という内容が書かれている。そして、結局アメリカは、1972年の沖縄の本土復帰まで、一度もそうした提案をしなかった。
 こうした法的トリックによって、アメリカは誰からも規制されることなく、沖縄に対して戦後も無法な軍事支配を続けることができたのだ。
 現在でも沖縄は国連の信託統治制度によって占領されていたと思っている人が多いがそれは誤解で、もし信託統治制度だったら、占領期の沖縄ほどひどいことになるはずがなかった。〉

   《講和条約(平和条約)に関する問題に、国連憲章は適用されない

〈こうした講話条約のトリックは、小手先のトリックで、あきらかに、大西洋憲章や国連憲章の大原則に反している。どうしてアメリカ以外の連合国諸国が、そうした見えすいた国際法違反の条項に反対しきれなかったのか、その謎が、先の敵国条項、国連憲章第107条を読んで解けたわけだ。
 国連憲章はさまざまな理想主義的条項を定めているが、「敵国」に対する戦後処理については、そうした条項はすべて適用されない、適用除外になるということだ。
 そこで、講話条約の第6条にもとづき日本に駐留する米軍や、第3条にもとづいて支配された沖縄に関しては、いくらその実態が「民族自決の原則」や「人権の尊重」に反していても国際法には違反しないということになる。〉

   《沖縄の問題は、人権ではなく人種差別でしか扱えない

〈以前、国連で働く日本人に
「沖縄の現状を国連人権理事会で問題にしてほしい」と頼んだところ、「それは無理で、人種差別についての勧告ということになります」との返事をもらった。福島の原発事故に関しても人権理事会の委員長から任命された専門家が日本にまで来て放射能汚染の実態を調査し、日本政府に対して住民の健康を守らせるための詳細な勧告をしている。それなのになぜ沖縄の問題だけは国連の人権理事会が声明を出してくれないのか。〉

沖縄や本土の「人権条項の適用除外」の源流は、国連憲章「敵国条項」だった


〈調べてみると、国連が沖縄の米軍基地問題を取り上げる場合は、いつも人権理事会ではなく国連人種差別撤廃委員会による「人種差別についての懸念表面」という形になっている。
 日本の講和条約をめぐる問題については、国連憲章は効力を発揮しないので、沖縄の米軍基地問題についていくらそれが人権を侵害していても、国連人権理事会はアメリカ政府に対し勧告を行うことができない。しかしそうした現状を放置している事は、沖縄人(琉球民族)という「人種の違う民族」への差別にあたるとして、日本政府に対し勧告することができる。
 沖縄や本土の人々を苦しめている不条理、つまり航空法など「人権条項の適用除外」の源流は、この107条による「国連憲章すべての適用除外」にあったのだ。〉

 以上をおさらいしてみます。

 世界には国連があり、国連には人権理事会があっても、
① 国連とは国際連合と訳されているが、戦中の連合国の組織で、日本はその中では「敵国」に当たり、「敵国条項」が適用されること
② 国連憲章よりも二国間の講和条約のほうが優先し、その講和条約には条件付きではあるが、アメリカが、沖縄の島や住民に対し、行政、立法、司法上のすべての権力を行使する権利をもつことが巧みに記されていること
③ それが日本政府の受容体質により、日米安保条約や地位協定に引き継がれて今日まで来ていること
 こうしたことのために、日本人は、日米関係がもたらす人権侵害に関しては、国際機関の保護や監視の対象になっていないということであります。
 また、日本の国には「日本国憲法」があり、基本的人権が保障されているはずですが、安保条約がらみのことは「司法になじまない」という最高裁の尻込み判決のために、憲法による人権保障も適用されません。

 これがこの国の民の持つ権利の実態でした。戦後はまだ、なんにも終わっていません。

 さてそんな状況下、沖縄では、辺野古の基地建設をめぐり、建設反対を公約に掲げた翁長県知事が、建設承認を取り消す決定をするなど、国との間で大きな問題になっています。上記の背景を踏まえ、どのような解決策が望ましいのでしょうか?

 国が外国と結んだ取り決めに基づいて進める工事に、地元住民と地元自治体が反対しているのです。国際法的背景は上記のごとしですが、沖縄県民の戦中から戦後70年の受難の歴史も、筆舌に尽くしがたいものがあり、多くの日本人の知るところでもあります。このため、沖縄住民の反対運動を熱心に支持している国民は少なくありません。

 普通なら、政府の外交政策に従うのが国民の立場でありましょうが、長きにわたり、人権が守られていない状況を放置しつづけてきた国が、この点を住民から突き付けられているのです。
「この国民の正当なる要求をいつまでも無視するわけには、あるいは金で誤魔化しつづけるわけにはいかない」と判断するのが、日本国の当たり前の政治家でありましょう。

 過ちを正すよい機会ではありませんか。この計画を無理やり実行することは止めるべきです。いくら国際法上の抜け道をくぐりぬけ、まかり通るはずのことでも、また日本が「敵国条項」に当たる国であっても、70年もの歳月を経てきているのです。世界には国際法があるかもしれませんが、それを動かす国際世論もあります。国民世論が背景となれば、国際世論も動くに違いありません。
 政府は対米関係があるから、基地建設を白紙に戻す決断はできないでしょう。ですが、地元の反対の前に中断せざるを得ないという認識に立って、時間をかけて、別の、より根本的な解決策を模索すべきです。そういう時期に来ているのです。

 そんな感想を持っています。みなさんのお考えはいかがでしょうか?

 今日のおまけの写真です。
 今年、お陰様で覚えたシュウメイギクです。ご近所の庭先より。
IMG_0783 シュウメイギク.jpg


IMG_0959 シュウメイギク白.jpg


 孫が集めたどんぐりです。
IMG_0951 どんぐり.jpg


 ご近所宅の庭先にある夏ミカンです、たぶん。いい色をしています。
IMG_0961 夏みかん.jpg


 ご訪問に感謝します。

 そうそう、ジパング党!名前がいいでしょう、鬼才シルフさんの発案ですから。
 まだブームになっていないので、みなさまのご支援とご指導をお待ちしております m(__)m


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kazg

私も、以前、「信託統治」だと記憶していて、それが誤りだと人から訂正されても、はっきり違いがわからず今日まで来ていました。「信託統治」の方がましだったという指摘は、目からウロコでした・
「人権条項の適用除外」の件、謎が解け、憤りも新たになった思いです。
戦後70年にして、対等な日米関係をめざす国民世論、それを支持する国際世論を、展望しなくては解決しない要諦なのですね。
by kazg (2015-11-02 06:31) 

majyo

私は大きな勘違いをしていました。
沖縄問題は人権問題として考えなければならないと思っていましたが
敵国条項により、人権は適用除外であり
扱うべきは人種問題なのですね。
安保がらみは適用されないことが多く
それが日本国憲法の上になっているという事です。
これらを白日の元にさらして、広く国民に認知させなければならないですね
これを打開するところが政権を持たないと
今のままでは戦後70年が戦後100年経ったとしても
同じでしょう
先ほど、昨日の記事にこちらを追記させていただきました


by majyo (2015-11-02 08:11) 

momotaro

kazg 様
あの本で目からウロコがポロポロ落ちました。
日本の社会科教育は、憲法の三原則(国民主権、平和主義、基本的人権の尊重)を中心に据え、三権分立という民主主義の形態や地方自治などを事細かく説諭していますが、大間違いでしたね。
70年前の戦争とその敗戦のために、憲法の上に戦勝国アメリカがあり、国際社会では「敵国」として最下層におかれ…という実情説明が完全に抜け落ちていましたねぇ。
教科書もすべて書き直しが必要でしょう。社会科の先生を筆頭に、現場の先生方、子どもたちになるべく真実をお伝えくださるよう、大変でしょうが、頑張ってください。という思いです。
by momotaro (2015-11-02 11:38) 

momotaro

majyo 様
沖縄の問題は本来は人権問題なのでしょうが、法文上は人種問題としてしか扱えないということのようです。
「これらを白日の元にさらして、広く国民に認知させなければ…
これを打開するところが政権を持たないと
今のままでは戦後70年が戦後100年経ったとしても同じでしょう」
おっしゃるとおりです。
追記に感謝します。
by momotaro (2015-11-02 11:43) 

トックリヤシ

とても良く分かりました。・・・が、
政治家たちはそこら辺の事情をどの程度認識しているのでしょうかね。
認識した上でだとして、一体何時まで・・・いや永遠に
国民や国際世論を騙し続けるつもりなのでしょう。。。
by トックリヤシ (2015-11-02 13:38) 

momotaro

トックリヤシ様
政治家たちはこの辺の事情をどの程度認識しているのか?
アベチルドレンのようなにわか政治家は何も知らないかもしれません。何年もやっている人も、現状のもとになっている条文を確と知っているかどうか・・・?
> 一体何時まで・・・いや永遠に
> 国民や国際世論を騙し続けるつもりなのでしょう。。。
まったく、この日本という島社会で、自分たちの指導的立場だけ維持できれば、国益なんかどうでもいいんでしょうね。
困ったものです (ーー;)
by momotaro (2015-11-02 17:34) 

SUN FIRST

私も、良く分かりました。
政治には何も期待してはいけないということ。
日本の政治家に世直しをする気などないことが、「臨時国会を開かず」「開かなくとも構わず」のひとつで理解できるというものです。
トックリヤシさんの・・・が、でしょう。。。に打たれましたね。
あすは、国会前で「国会開け」と訴えてきます!
ひとりあたり2億円ももらって2ヶ月以上も休むのですからね!!
momotaroさんの今回を読み終えて政治に物申すのはやめようといたく思いました。
「今後も一票は大事に行使します。」と誓約のうえ、最後の屁を国会前でしてきます・・・。


by SUN FIRST (2015-11-02 17:58) 

gonntan

長いものには巻かれろ~~~
巻かれた振りしてるうちに、なんで巻かれているのかわからなくなって・・・
巻かれることが気持ちよくて目的になってしまった

by gonntan (2015-11-02 22:34) 

momotaro

SUN FIRST 様
> あすは、国会前で「国会開け」と訴えてきます!
明日は・・・、DoBitcH さんから下記のメールをいただいていました。
****************
11/3 祝日 13時〜15時 国会前(北庭前)で「国会開けデモ」を開催します。
NO WARデモ実行委員会と「アベ政治を許さない」アクションの共同開催になります。
司会進行は木内みどりさん、落合恵子さんと渡辺一枝さんも参加されます!
参加者マイクリレーをします。ご参加を!
****************
私は残念ながら行けません。空き時間があったらブログの原稿書きでもしています。
> 今回を読み終えて政治に物申すのはやめようといたく思いました
とありますが、あの本はまだ終わっていませんので、ぜひ、続きを楽しみにしてください。それから、政治に物を申し続けないといけないんですよ、知らないことをいいことに、国益など顧みず、自分たちの都合のよいことばかりをやっているのですから。
> 最後の屁を…
などとおっしゃらず、まだまだ何度でも屁をしりに行きましょうよ(*^^)v

by momotaro (2015-11-02 22:49) 

ファルコ84

政治家は、
ここまでアメリカべったりで
ある意味平和な日本を
享受してきたので
今更、自立しようとする
気力や気概のある人は出てこないのでしょう!
また、しようとも思わないのでしょう。
そして、一部の国民に不便をこらえさせているのです。
これが、楽だからです。
何んとも、嘆かわしい政治です。
by ファルコ84 (2015-11-02 22:50) 

momotaro

gonntan 様
ありがとうございます。達観ですねー、あり得ますね~
by momotaro (2015-11-02 22:53) 

momotaro

ファルコ84様
> 政治家は、一部の国民に不便をこらえさせているのです。
> これが、楽だからです。
> 何んとも、嘆かわしい政治です。
そうかもしれません。税金を少し余計に回して、それで一部の人の頭を撫ぜて、大勢の人に不便をこらえさせているのです。
「これが楽だから」ホント、なんとも嘆かわしい、また情けない人たちです。
by momotaro (2015-11-03 00:31) 

Enrique

↑まったくおっしゃる通りです。
毅然とした交渉をして国益を守るよりも,アメリカさんの言う事を聞いて国益を損ねても,心優しい自国民には強権でガマンさせる方が簡単な上に飴玉まで貰えるとなれば。
それに,秘密主義では,仮に国益にかなう努力をしてもそれも国民には分からないわけですからモラルも低下する事でしょう。何も知らせないまま「大筋合意」のTPP見てもそれは言えます。
by Enrique (2015-11-03 12:22) 

lamer

日本にある米軍基地は日本の為ではなくアメリカの為にあるのです。
by lamer (2015-11-03 18:00) 

momotaro

Enrique 様
この政治体質は本当に困ったものですね。
亀の歩みでもよいから、ものごとが真っ当な方向に向かっていけばよいのですが、ちっともそういう方向感覚がなく、ただとぐろを巻いているだけなのですから、どうしたの、日本人! どうしたの日本の指導者!
って感じですよね (;一_一)
by momotaro (2015-11-03 22:12) 

momotaro

lamer 様
日本にある米軍基地は日本を守ってくれるためと思っている人が多いようですが、アメリカの重要な世界戦略であることは間違いありません。中でも大事なのが、日本そのものを制圧し続けることでしょう。
日本が外国の軍隊の駐留を拒むことも大事ですが、代わりに日本が軍国主義化することも危険なことに思われます。
平和主義外交を着々と進めて、軍備の縮小化を相互に進めていくよう努力すべきですよね。
by momotaro (2015-11-03 22:34) 

さきしなのてるりん

沖縄の問題は民主主義の問題として国際社会にアピィルされていると思います。米カリフォルニア州バークリー市議会では9月15日15日、辺野古への米軍新基地建設について沖縄 の市民と連帯し、建設に反対する決議を全会一致で可決しました。国がどうであれそこに住む住民の意思が守られなければ民主主義の国とは言えない。そこを強く言いたいし、翁長知事はそれを訴えていると思っています。http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-09-17/2015091707_01_1.htmlご参考までに
by さきしなのてるりん (2015-11-11 11:54) 

momotaro

さきしなのてるりん様
翁長知事の毅然とした対応を尊重し、国民の側に立った解決策を、政府がとることを期待してやみません。
by momotaro (2015-11-11 17:37) 

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