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『日本はなぜ、「基地」と「原発」を…』を読んで その17 [『日本はなぜ、「基地」と「原発」を・・・』]


   《 PART3 安保村の謎①-昭和天皇と日本国憲法》(7)

もし国土の一部でも占領されていたら、その間は絶対に憲法に手を触れてはならない
〈こうして憲法をGHQが書いたという事実を隠した上に日本の「法学」を組み立ててしまったため、戦後の日本社会の法的な基盤は本当に脆弱なものになった。その結果の一つが「統治行為論」であり、三権分立の否定につながっている。
 その点、ドイツの場合、占領中は絶対に正式な憲法をつくらず、「暫定憲法」を定め、「この基本法は、ドイツ国民が自由な決定により議決した憲法が施行される日にその効力を失う」としている。フランスが1946年に制定した「第四共和国憲法」には、見出しに掲げた趣旨の条文が入っている。憲法に関するこうした常識があれば、沖縄が議会に代表を送れない状況での憲法づくりはあり得なかったはずである。〉

 著者の解説の展開とは別に私の感想を述べると、ヨーロッパの国の憲法は、その都度、その国民の総意によってつくられているため、他国の影響を受けて国民が自由に思考、議論、採決ができない恐れがある場合には、憲法に手をつけることはできないとし、そういう状況にないときのみ、必要があれば改正を検討するという、国民の自由意思による総意の尊重が貫かれている。

 一方日本の場合は、憲法を、国民の自由意思による総意で決めた実績がない。そもそもの大日本帝国憲法は、国会開設前に、自由民権運動による様々な試案を何ら参考にせず、むしろ弾圧して、伊藤博文らが枢密院で審議して草案をつくり、天皇が首相に手渡すという形で公布した欽定憲法である。

 憲法は、国民が自由に発案、審議できる状況で、総意で決めるものという実績・実感がまったくないどころか、不自由な状況で、天から与えられるものという認識のほうに慣れているのである。この、戦前社会の民度の低さこそがすべての根底にあるように思う。その民度の低さの原因は、国民の側にあるというよりも、明治維新以降の藩閥専制政治にあるのであり、先に立つ人が率先して世界標準を学んでいかないと、国として大損をしてしまうということではないかと思う。

 今もそうである。日本政府のやろうとしていることは、世界標準から桁外れに遅れている。複雑な世界情勢のなかで、積極的平和主義と称して、世界中の紛争に関わろうとしている。せっかくある憲法の歯止めを自ら外して同盟国の要望に応えようとしている。そうした政策を実現するため、情報管理やら、報道への圧力やら、誠意のない稚拙な説明やら、噛み合わない国会審議やら…北朝鮮の後追いをしているかのような独裁政治を展開している。
 どうして日本の指導者は、国益を考えず、自分たちの政治のやりやすさばかり考えるのだろうと思う。
 さてさて、本に戻ろう。

本当は論争になるはずがない話
〈日本国憲法はGHQが書いたということはGHQが本でオープンにしているので、明らかなことである。日本の左派だけがこの事実を否定している。〉

だれが条文の骨格を決めたのか、決める権利を持っていたのか》   
〈この問の答えは100%GHQだった。「占領軍が被占領国の憲法草案を自分で執筆した」という異常な事態は、いくつかの歴史的偶然から起った。〉

憲法改正の権限を握ることになった極東委員会
〈日本軍兵士の強さをだれよりもよく知っていたマッカーサーは、その数百万もの日本軍が八月十五日以降、天皇の命令でピタリと抵抗を止め、粛々と占領軍の命令に従うようになった事実から、占領政策に昭和天皇の存在が欠かせないことを知ったはずだ。一方政治日程として東京裁判の開廷が近付いており、アメリカ国内外に、天皇も裁判にかけろという声が強く存在した。そうした事態を避けるために「天皇も日本も将来絶対に軍事的脅威になる可能性はない」という形で新しい憲法をつくる必要があった。
 また、日本占領についての権限をめぐって米ソが対立し、その結果、11ヵ国からなる日本占領に関する最高決定機関、極東委員会がワシントンに設置されることになった。〉

極東委員会が発足する前に、日本人がつくったことにしてつくれ
〈極東委員会が発足する前にGHQが草案をつくって日本政府に受け入れさせておき、発足後は日本政府に日本語の草案をつくらせ、マッカーサーが承認を与えればよいというチャールズ・ケーディスの進言に沿ってことは運ばれた。〉

 もう少し進めたいのですが、今日もまた素晴らしく暑かったこともあって、熱中症にならないうちに、これにてUPすることにします。また、ご感想等お聞かせください。
 
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コメント 4

gonntan

「主体的に担う者がこの国にはいなかった」という指摘
たしかにその通りだと思いましたね。
それに対して、日本人の真面目さや一途さは今でも外国の方の
憧れであると同時に脅威でもありますよね。
by gonntan (2015-08-03 22:57) 

momotaro

gonntan様
おっしゃるとおり、日本国の法的政治的脆弱性と実体の強さは、見事にバランスを欠いていますよね。
それがために、大変リスキーな国の歩みになっちゃっていますよね
早く欠点に気がついて強化していかなければいけないところを、いま欠点剥き出しで無理やり前に進もうとしていますからね
どうにか止めなければいけない局面ですよね
頑張りましょう、暑いけど、身体を大事にしながら (^O^)/
by momotaro (2015-08-04 06:18) 

majyo

戦後の日本とドイツは対極的にあり
今もアベとメルケル首相と全く違います
もちろんどちらが良いと言えば、それはドイツになると思います
基地と原発で書かれていたように
形だけの独立国である日本は、先ずは基地撤廃し
その後に憲法を改正するなら正式な手順で進むべきです
今回のように違憲でも、それを通すと言うなら
国の根幹が崩れますね
日本は特攻や回天のように片道切符での攻撃をしましたから
恐ろしい国であり兵士と思われ
絶対的に戦争しないという憲法を与えられました。
しかし、これは考えてみれば、最高の憲法です。
だから、この憲法があるから手助けは出来ない!そう言い切れば良いのです
フィリピンのように
戦後レジウムからの脱却と言いながら
唯々諾々と言うとおりにする、この政権と官僚たち
戦後のどさくさに紛れて形ばかりの独立国であるという事実を
多くの皆さんに知ってほしいですね。
読んで理解するのも大変ですが、まとめる方はもっと大変
酷暑の中、ありがとうございました
by majyo (2015-08-04 21:36) 

momotaro

majyo 様
日本国憲法、出自が変なので取り扱いもいい加減で良いというのでは、法治国家は成り立ちません。
おっしゃるとおり、まずはしっかり尊重して、基地や地位協定の問題を解決してから、国民の間で自由に十分議論を重ねたうえで、自分たちの憲法をつくり、持ちたいものです。
いまの権力者集団は、虎の威を借りて日本国に君臨することしか考えていない人たちなので、いまより良い憲法など、とても、考えられるはずがありません。
暑いなかを東奔西走、日々活躍されている方にコメントをいただき、ありがとうございました。
by momotaro (2015-08-04 22:00) 

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