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『日本はなぜ、「基地」と「原発」を…』を読んで その10 [『日本はなぜ、「基地」と「原発」を・・・』]

   PART2 福島の謎(5)

《法律が改正されてもつづく「放射性物質の適用除外」》
〈福島原発事故から一年三ヵ月たって、放射能汚染の適用除外については法律の改正が行われたが、見せかけだけで実態は何も変わっていない。放射能汚染については「政府が基準を定め」「国が防止のための必要な措置をとる」という形になったが、肝心の基準が決められていない。このため、健康被害を根拠に訴えても訴訟で勝てない。国の安全保障に資することとされたため、安保条約と同様、司法の及ばない問題となってしまっているから。〉

《「何が必要かは政府が決める。そう法律に書いてあるでしょう!」》
〈「原発事故 子ども・被災者支援法」は、超党派の議員立法によって全会一致で可決されたが、日本政府は一年以上、何一つ具体的な行動をとらなかった。そんな折、国会議員の会合がもたれ、議員の一人が被災者に対する意見聴取会を開くべきだと主張したところ、復興庁の水野靖久参事官が、見出しに掲げた発言を強い口調で言い放った。これでは国民の人権など守られるはずがない。〉

 アメリカに追随する70年の間に、官僚の多くが、すっかり国民を軽視してアメリカの意向に沿うことを仕事と思うようになってしまった。虎の威を借りていれば、楽で、失敗することもないからである。問題点を探して改善しようという意欲がなければ、それで生涯無事に役人として立身出世できる。情けない人たちだ。元経産省官僚の古賀茂明さんが書いた本のタイトル『日本中枢の崩壊』を思い出す。あの本には、役人の内向きの論理や、電力業界の暗然たる影響力など、国内的要因が様々に指摘されていたと記憶するが、さらに全体背景として、アメリカの巧妙な政治支配があったのだ。中枢が崩壊している。

《日米原子力協定の「仕組み」》
〈日米間の協定により、日本が独自に決められるのは電気料金だけで、あとは、アメリカの了承がなければなに一つ決められない仕組みになっている。こんな国家間の取り決めは、地球上他に存在しないだろう。そのうえ、この力関係を日本の側から是正する武器はなにもない。法的構造がそうなっている。〉

 詳しいことは、ぜひ原書をお読みいただきたい。

《なぜ「原発稼働ゼロ政策」はつぶされたのか》
〈野田内閣が2012年9月に「2030年代に原発稼働ゼロ」をめざすエネルギー戦略をまとめ、閣議決定しようとしたが、外務官僚と米政府高官が話をして強い懸念が表明され、閣議決定は見送られた。このようにアッという間に首相の決断がくつがえされてしまうのは、日米原子力協定という「日本国憲法の上位法」にもとづき、日本政府の行動を許可する権限を持っているのは、アメリカ政府と外務省だからだ。原発を止められない主犯はこの法的構造にある。〉

 なんとかしなければ、安全保障にかかわることに関しては(つまり一番大事なことに関しては)、日本の国土でやること、やらないことを日本人はなに一つ決められないという状況が続いていくということである。
 この問題から少し離れるが、安倍内閣は、積極的に閣議決定をして迅速に政策を実行しているが、これは安倍さんの力量云々ではなく、アメリカと外務省の意向にいかに軽く乗っているかという観点でみるべきだということでもある。

《「原発がどんなものか知ってほしい」》
〈日本の原子力政策が非常に危険な体質をもっていることは、平井憲夫さんという現場監督の方が遺した手記でよくわかる。ネット上に手記の全文が公開されているので、ぜひご覧いただきたい。
http://www.iam-t.jp/HIRAI/

《北海道の少女の涙の訴え》
〈平井さんが「この話だけはぜひ覚えておいてください」と語るある少女の話。「原発がそんなに大変なものなら…なんでいまになってこういう集会をしているのか…。もし私が大人で自分の子どもがいたら、命がけで体を張ってでも原発を止めている。」〉

 そうだよ、子どもたちに不安を与えるようなことは、即刻止めなければいけない。それが大人の務めだ!

《悪の凡庸さについて》
〈ドイツ映画『ハンナ・アーレント』の大量虐殺の犠牲者となったユダヤ人の話から、日本人の問題を指摘する。〉
《「なぜ自分たちは、人類史上最悪の原発事故を起こした政党(自民党)の責任を問わず、翌年(2012年)の選挙で大勝させてしまったのか」
「なぜ自分たちは、子どもたちの健康被害に眼をつぶり、被曝した土地に被害者を帰還させ、いままた原発の再稼働を容認しようとしているのか」
「なぜ自分たちは、そのような『民衆を屈服させるメカニズム』について真正面から議論せず、韓国や中国といった近隣諸国ばかりをヒステリックに攻撃しているのか」
 そのことについて、歴史をさかのぼり本質的な議論をしなければならない時期にきているのです。》

 PART2の終わり8行(原書で)は一字一句大事なので、本文をそのまま引用した。まったく思いを同じくしている。
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コメント 4

majyo

コメント?でも書きましたが
官僚は強きものに付き、そして立身出世の為に
国民をないがしろにしていますね。
憲法より裏マニュアルに忠実に仕事しています。
まさに虎の威を借り、正義などまるでないがしろにしています。
そして役人は、政治家をバカにしています。
もちろん、勉強不足の政治家も多いのですが
日本を真にアメリカ隷属から脱却させようとすれば
日本の官僚により、司法から行政迄 グルになって失脚させます
このシリーズを多くの方に読んで頂きたいです


by majyo (2015-05-17 10:10) 

momotaro

majyo さま
官僚はもう少し中立なものと思っておりましたが、
実は、日米合同委員会の存在で、完全な権力集団に
なっていましたね。
政治家も、官僚も、政界再編とか官界クーデターとか
起こってくれればいいのですがねー
わかっている人もいるでしょうから、そういう動きを歓迎し
応援しましょう\(-o-)/
by momotaro (2015-05-18 22:36) 

ファルコ84

事実を知れば知るほど
協定や官僚・・・とやらで
がんじがらめになっている現実に
愕然とします、でも最後の
>歴史をさかのぼり本質的な議論を
>しなければならない時期にきている
との一文で、ここで黙っていてはいけないのだ
という気持ちになりました
by ファルコ84 (2015-05-19 21:51) 

momotaro

ファルコ84 さま
まだ PART2、半分行っていないんですものね。
大きな宿題ですよね。ライフワークになりますよね、
日本人みんなの・・・
by momotaro (2015-05-19 22:46) 

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