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『日本はなぜ、「基地」と「原発」を…』を読んで その8 [『日本はなぜ、「基地」と「原発」を・・・』]

   PART2  福島の謎(3)

 福島の謎を解明するために、米軍駐留の経緯を再確認した。著者は、ついで、日本の側の問題として、官僚の果たしている役割を指摘する。

《三つの裏マニュアル》
〈「外国軍にほとんど無制限に行動の自由を許可すること」と「民主的な法治国家であること」は絶対に両立しないため、「戦後日本」という国は、国家のもっとも重要なセクションに分厚い裏マニュアルを必要とするようになった。それらは最高裁の「部外秘資料」、検察の「実務資料」、外務省の「日米地位協定の考え方」の3つである。〉

《殺人者を無罪にする役所間の連係プレー》
〈在日米軍の兵士が重大な犯罪を犯したとき、米軍と日本の官僚の代表が非公開で協議し、そこで決定された方針が法務省経由で検察庁に伝えられ、検察庁は軽めの求刑をすると同時に、裁判所に対しても軽めの判決をするように働きかける。こうした役所間の連係プレーが行われていることがわかっている。〉

《日本のエリート官僚が、ウラ側の法体系と一体化してしまった》
〈砂川判決に見るように、三つの裏マニュアルなどによって、ウラ側での権力行使がオモテ側の日本国憲法・法体系のなかに位置づけられてきた。その結果、国家の中枢にいる官僚たちが、オモテ側の法体系を尊重しなくなってしまった。〉

 由々しき事態である。国民が尊重し順守している法体系は、官僚にとっては実は飾り物でしかなかった。なんという国民に対する裏切り行為か。
 政治家は選挙によって洗われているから、選んだ者の責任もあるという容赦の仕方もできるが、官僚は、官僚が選び官僚が人事を行い官僚が組織的に仕事をしている、いわばお任せ集団である。それを監督するのが国会、つまり政治家の役割というわけだが、みそぎを受けることもなく、専門分野を担当しつづけている官僚のほうが、その道に詳しいに決まっている。行政職のトップである各省大臣は、政治家の出世目標になっている名誉職のようなものである。そういう政治家が情けなく、それをもてはやすマスコミや国民もどうかと思うが、官僚がアッチを向いていたのでは、国政全体がアッチを向いてしまって、どうにもめちゃくちゃになってしまうのは目に見えている。
 自分たちの組織のトップである内閣総理大臣の指示に従うどころか、日米合同委員会の趣旨をおもんぱかり、不都合があれば総理のほうを換えてしまうなどは言語道断の背任行為である。自分たちだけがその経緯を承知していれば、何をやってもよいとでも思っているのだろうか。

 著者矢部氏は、官僚たちがそうなるのは《ある意味当然で、一方的に彼らを責めるわけにはいきません》と一定程度、理解を示しているが、筆者はそうは思わない。している仕事がその任務と照らしておかしいと感じたら、それがある程度に達したら、上司に抗議をしなければ、また、役職を辞す覚悟で世間に告発せねばなるまい。長いものに巻かれるのも一時の方便である。それが高じて延々と続くようでは、自分たちが腐っていることに気づいて恥じなければなるまい。
 国家の中枢で要職に就いている人たちは、地位と権限に魅力を感じている場合が多いのだろうから、そのコースにいれば順風満帆の人生で、そこから外れたら零落・落伍と思うかもしれないが、よく考えてみよ、立身出世という目標は、親兄弟、親戚知人の手前ではないのか? あるいは、子孫・末裔に尊敬されたいためか? 本当に、自分自身がそういう人生を望んでいるのか? それが本意か? たった一度の人生を、他人に振り回され、他人の人生を生きていはしないか?

 今からでも遅くはない。どんな国づくりをすれば、日本の安全と安定を図りつつ、平和な国際社会に貢献できるのか、そこに、その豊かな英知を発揮してはくれまいか! そこから得られる精神のすがすがしさを味わってはくれまいか?
 あるいは、これが「戦後日本の生きる道、これしかない」と思っている人もいるのかもしれないが、国にこんなウラがあることを、この国に生まれてくる赤ちゃんのだれが予想だにしようか。人の世の不条理の限界を超えていると思わないか? ヤクザなウラ社会の話ではないのである。れっきとした、生まれてくれば自動的にそこの住人となり、教育機関も、教師も擁する「国」の話なのだから、考え直すしか、頭を丸めて一から出直すしかないだろう!

 官僚がその気になれば、この国の病はどんどん治るだろう。その気にならなければ、当分病んだままだろう。病んだ国が活発に活動すれば、すればするほど、事態が厄介になる。取り返しがつかなくなる。 

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ファルコ84

Part2を読み始めました
憲法・条約・法律・・・・!
基地・原発・・・・!
諸事実が入り組んで
整理が出来ていません
纏めてからUP予定です。


by ファルコ84 (2015-05-08 23:54) 

majyo

官僚の立場ですが、私も矢部さんのおっしゃることには
同意できません。そこに国民への良心は無いのでしようか?
強い立場につくではなく 正しい立場につくべきです。
日本を動かすために官僚になると、東大の人が言っていたそうです。
ある程度仕組みがわかっていたのでしょう。
これから、六本木Airポートについて書きますが
何十年も前から、こんなことをやっていて 今でもやっていて
政権がひっくり返らないのが 本当におかしいと思います。

by majyo (2015-05-09 15:10) 

momotaro

ファルコ84 さま
私もなかなか時間がなくて、ブログにどんどん・・・というわけには
いかないので、ゆっくり、じっくりやっていきましょう。
どうせ、何十年も東大出が旧態依然と続けてきたことですから
庶民が何ヶ月か掛けても、なんの問題もないでしょう!

majyo さま
六本木エアポート楽しみにしています。
> 政権がひっくり返らないのが・・・
日本人て、素直・従順なんでしょうね、よく言えば。
為政者からみると、御しやすいですよね。
でも、集団の向かう方向をよく考えないと
結局、痛い思い、辛い思いをさせられるのは国民ですから、
エライひとに任せてついて行くだけでは、ダメですよね。
かつて、戦争に導いた指導者たちも悪かったけれど、
それをどうにもできなかった国民も、
大いに反省しなければいけませんよね。
今頑張らないと、悪事の繰り返しになりますよね!
by momotaro (2015-05-09 17:49) 

SUN FIRST

私が生まれ育った時期は、親もおじいちゃんもおばあちゃんも二度と戦争は
いやだと言ってました。
 どうして?日本人はこうまでも馬鹿なのか?現総理の爺さんがやって失敗したこと(第二次大戦で敗戦)を孫がまた繰り返そうとしている。としか、思えませんが、「よみがえる悪夢」の現実を、国民の大?多数が支持していることになっているのです。
 私には理解することができません!
孫もできていま二歳を過ぎました・・・。
私に、いったいどうして、説明ができるでしょう?
いまだ、鳥獣の餌付けがごとき政治手法に甘んじる社会なのですね!?


by SUN FIRST (2015-05-12 21:27) 

SUN FIRST

オスプレイが横田基地に配備されることになって、沖縄県の基地反対を人ごととして支援するのでなく、我がことになって・・・。本当の沖縄県の皆さんの苦労が理解できることになって良かったですね。
福島がそうであるように日本人は人ごとには一生懸命なんですね。
今度はそうはいきませんぞ!
自分のこととして考えましょうぞ!!

by SUN FIRST (2015-05-12 21:45) 

momotaro

SUN FIRST さま
> 現総理の爺さんがやって失敗したこと(第二次大戦で敗戦)を孫がまた繰り返そうとしている。としか、思えませんが・・・
とありますが、世界大戦での敗戦まではとても想定していないのでしょうが(想定外でそうなってしまうということは大いにあり得ますからね)、北朝鮮と一戦構えるくらいのことは、あの頭脳では考えているかもしれませんね。国民に諮らず突っ走っている。怪しからんことです。

オスプレイの配備については、マジョさんが今日の記事で触れていますよね。大変参考になりますので、ショートカットを付けておきます。
タイトルは「横田基地、オスプレイ」
http://majyo1948.blog.so-net.ne.jp/2015-05-13-1
by momotaro (2015-05-13 18:01) 

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