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戦後の日米関係 ① [続・友よ、戦争をしない世界を創ろう!]

 書きかけですが、取り敢えず更新します。

《戦後の日・米関係》

 日本政府に大きな影響力を持っているアメリカとの関係を概観しておきます。
〈戦争直後の関係〉

 戦争に完勝したアメリカは、まずは当然日本の武装解除の徹底を図ります。それから社会制度の改変を実施します。国を挙げて一丸となる全体主義に再び陥ることがなく、国民に解放感を与えるような政策として、様々な分野で民主化が計られます。
 占領し、自国の植民地にすればそのような政策の必要は必ずしもないわけですが、米・英は、日米開戦前の1941年夏に、大西洋憲章を結んでいます。ナチスドイツを駆逐した後の戦後の構想を両国代表が述べ合い、大西洋上で調印したもので、次の8項目からなります。
 その内容は要約すると以下になります。(Wikipedia による)
1. 合衆国と英国の領土拡大意図の否定
2. 領土変更における関係国の人民の意思の尊重
3. 政府形態を選択する人民の権利
4. 自由貿易の拡大
5. 経済協力の発展
6. 恐怖と欠乏からの自由の必要性(労働基準、経済的向上及び社会保障の確保)
7. 航海の自由の必要性
8. 一般的安全保障のための仕組みの必要性

 戦後処理はこの憲章の趣旨にそう必要があったわけです。

 アメリカとしては、領土にはできないものの、大きな代償を払って手に入れた戦利品ですから、その活用法については抜かりなく検討します。アメリカの戦後の世界戦略にどう役立てるか。
 気遣いなのは終戦直前に参戦したソ連の侵攻と日本の共産主義化です。占領した日本の領土を第三国と分割統治することにならないよう、また、共産主義の台頭により国内秩序が乱れ液状化してしまうことのないよう、できるだけ混乱を少なく収拾する必要があると判断します。
 そこで、天皇の絶対的権威の利用が検討され、実行に移されます。そしてそれは、戦争責任の回避と、地位の保全ないしは日本国の伝統維持を願う天皇側の意向とも合致し、両者の協力関係が阿吽の呼吸で成立、戦後の改革が大きな混乱もなく遂行されます。
 現人神であった天皇は人間宣言をし、元首の座から、政治力を持たない象徴という立場に変身します。

 ほどよく戦前の国体を残した枠組みで占領軍の統治は進み、日本軍の解体と米軍基地の建設が行われていきます。
 アメリカが日本の地に軍事基地を置きたい理由は、枢軸国との戦争に勝つ中で勢力を伸ばした社会主義体制のソ連と中国に対峙する前線基地として活用することと、日本の軍事的台頭を監視・事前に阻止することの二点にあると思われます。
 こんな思惑の中で、戦争で疲弊した日本国民の思いもあって、象徴天皇制、非武装平和主義、国民主権と基本的人権の尊重を謳う日本国憲法が作られます。そして、以後多くの日本人がこれを愛することとなります。(このあたりの事情は矢部宏治著『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』に詳しく書かれています)

〈朝鮮戦争と東西の熱い戦い〉

 こうして先進的な憲法を持つ戦後日本が誕生しますが、国づくりをしたアメリカにとって憲法を尊重してばかりいられない事態がすぐに起こります。
 1950年に朝鮮半島で戦争が起きます。これは、終戦間際に参戦し朝鮮半島に進軍してきたソ連とアメリカとが北緯38度線を境に分割統治することになり、南に大韓民国が、北に朝鮮民主主義人民共和国ができます。北側が周到な軍事力を以って境界線を越え、大韓民国を圧倒、これを米英が国連軍を組織し応戦。日本に駐留する米軍も当然出動。南側が優勢になると中国軍が参戦、猛反撃に出ます。こうして1953年の休戦協定にたどり着きます。
 中国軍には台湾侵攻の動きもあり、アメリカは艦隊を派遣します。
 その後ベトナムでも類似の事態が起きます。東西が冷戦に至る前の熱戦の時代でした。
 朝鮮戦争が始まると、日本の防衛力・治安維持力が懸念され、警察予備隊、後の自衛隊が首相直属の機関として組織されます。

 日本の独立も急がれ、1951年、サンフランシスコ講和条約が、日米安全保障条約とセットで結ばれます。
 安保条約は日本の安全を保障してもらう意味合いが強調されますが、この条約により、米軍の駐留が際限なく続くことにもなります。

〈憲法に反する日米同盟〉

 自衛隊は国の存続が脅かされる事態に備える自衛のための組織で、条文こそないものの、憲法の想定する範囲内という解釈もできますが、日米同盟となると、国際紛争を解決する手段として戦争を認めず、軍隊も有しない国が他国と軍事同盟を結ぶことは、憲法に違反します。このため、アメリカとの関係は、憲法より上位に位置することとされます。
 こうして、憲法が国の最高法規という世界の常識を超えた中途半端な「独立国」が、サンフランシスコ講和条約以降営まれることになります。

〈日米同盟のフラストレーション〉

 日米同盟はアメリカの世界戦略上欠かせないものであると同時に、日本にとっても、その笠の下にあることが、ソ連(現在はロシア)や北朝鮮、中国の脅威に備える上で欠かせないものとして、最重要視されてきました。このため日本政府はアメリカに基地を提供し続けるにとどまらず、その要求はほぼ全面的に受け入れ、国民の反対が予想される事項では密約を交わし、国民に知らせることもなくその要求に応えてきました。

 アメリカにしてみると、自国の防波堤であると同時に、その庇護のもと、平和を享受し、象徴天皇を頂き、経済力はアメリカを脅かすまでに成長し、アメリカにない国民皆保険制度も持つ国になったのですから、日本との関係は心穏やかではありません。防波堤であると同時に、したたかなライバルでもあったのです。

 米軍基地を抱えた国民の人権問題、憲法が通用しない不条理、密約が横行する不透明な政治、少子高齢化が進行している社会問題など、日本社会が抱える悩みなどは目にも止めず、自国より好く見えるところだけを羨ましく思ってきた節がうかがえます。もっとも、日本の問題は日本側が主張すべきであって、アメリカに察してくれというものではありませんから言わなければ通じないのも当然のことです。
 資本主義社会の恩恵を受けているなら、防衛費を負担しろ、汗を流せ、血も流せということになります。
 こういう圧力が、日本政府にはかかりっぱなしなのでしょう。

〈戦争に勝った国と負けた国〉
 しかし、日本とアメリカは立場が違います。
(次回に続きます)
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コメント 10

トックリヤシ

おや、また一番だ~!
政権が変わっても日米関係が変化しない訳がそこにある・・・
これから先も国民には知らされることなく
アメリカ追従で行かざるをいないのでしょうか。。。

by トックリヤシ (2016-11-11 19:54) 

SUN FIRST

この国はほんとうにやるせない国だと思います。
他国のおかげでいまの自由主義を理解することができたのですから・・・。
今上天皇がいまの日本を一番大事に思われているのだと思います。
安倍晋三総理、
要職にありながら嘘ばかりついて・・・。
過去最悪でしょう?。



by SUN FIRST (2016-11-11 22:28) 

momotaro

トックリヤシさん
nice とコメント一番乗りに感謝します。
いつも早々とお越しいただきありがとうございます。
> これから先も国民には知らされることなくアメリカ追従で行かざるを・・・
そんなことはないと思います。アメリカに追随しても、お国柄と立場が違いすぎて、何にもならないのではないでしょうか。早く〝我が道を行く〟日本の道に気づいて独自の路線を歩み始めるべきだと思います。
by momotaro (2016-11-11 22:36) 

momotaro

SUN FIRST さんへ
2番目のお越しに感謝します。
> いまの日本を一番大事に思われている
のは、今上天皇と、ここのブログの仲間たちです、SUN FIRST さんも含め。
> 安倍晋三総理、
要職にありながら嘘ばかりついて・・・。
過去最悪でしょう?。
同感ですが、過去最高に男前なんですよね、背も高いし。そんなんで支持しないで欲しいんですが・・・
by momotaro (2016-11-11 22:49) 

ファルコ84

戦後の日本、その成り立ちぶりと
多くの問題がある事がよくわかりました。
新しい大統領になって
>防衛費を負担しろ、汗を流せ、血も流せ
この要求が今にも増して強まるでしょう。
米国によりかかり過ぎたツケにならないとよいのですが!
尻尾を振り続ける安倍政権です。
by ファルコ84 (2016-11-12 00:04) 

momotaro

ファルコ84さんへ
お早々のコメントありがとうございます。
戦後の日本、多くの問題がありますよね
戦前に責任のある者たちがアメリカに媚びて恩を受けて出発しているから、ごまかしが多いんですよね。
そのため、どんどん借りが膨らんでいっています。
正しい方向に直せなくなっています、今の政権政党では。
by momotaro (2016-11-12 09:56) 

majyo

本当に的確に書かれていて、でも的確に理解できないので
保存版としてプリントしました
これをしっかり言えれば、街でもコメントでもとても勉強になります
日本の為に防衛しているとは全く思わないのです
世界戦略の中の一つですね
天皇と戦勝国の利害が一致したことが70年続いてしまいました


by majyo (2016-11-12 16:00) 

momotaro

majyo さんへ
いつもコメントをありがとうございます。
> 本当に的確に書かれていて・・・
手短にまとめるのが難しくて、的確かどうか・・・?
> とても勉強になります
いつも励ましていただきありがとうございます。
> 天皇と戦勝国の利害が一致したことが70年続いてしまいました
あれほど国民が痛い思いをしたことの責任の所在が曖昧のままのところが良くなかったですね。誰が日本国をああいう方向に導いたのか、どこがまずかったのか、誰も詫びていません。
by momotaro (2016-11-12 20:12) 

gonntan

majyoさんも言われるように的確なまとめで「使える解説」ですね
双方の利害が一致して戦後体制が始まった
日本が憲法を利用して修正資本主義的に経済政策を上手く廻した
結果、アメリカ以上に社会システムを作った部分もあるから
上前を出せよ・・思いやり予算として・・
なんて、いろいろ政治家たちは考えているんでしょうね
by gonntan (2016-11-12 20:49) 

momotaro

gonntan さんへ
> 「使える解説」ですね
本当ですか?苦労はしました。
> 日本が憲法を利用して修正資本主義的に経済政策を上手く廻した結果、アメリカ以上に社会システムを作った部分もある
この解説、いいですねぇ!
「上前を出せよ」
「一千兆も借金しちゃってるし、沖縄県民も大変だし…ご迷惑でしたらお引き取りください」って言ってやればいいのに・・・
by momotaro (2016-11-13 06:32) 

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