SSブログ

『日本はなぜ、「基地」と「原発」を…』を読んで その18 [『日本はなぜ、「基地」と「原発」を・・・』]

   《 PART3 安保村の謎①-昭和天皇と日本国憲法》(8)

   《二重の密室
〈憲法の草案は、ケーディスを現場責任者とするマッカーサーの側近によって、米軍の、日本占領の最重要プロジェクトという重要なミッションとして、秘密裏に正確に練られていた。〉

   《「押し付け」は、昭和天皇を救うためという側面が強かった
〈密室での草案執筆から日本政府への提示、そして日本語の条文を確定するまでの全プロセスが、GHQによって完全にコントロールされていたことは、資料的に見て議論の余地のない事実である。占領軍が被占領国の憲法草案を執筆し、それを被占領国自身が作成したことにしたという、他にほとんど類例のないきわめて異常な出来事である。しかし、この見たくない事実を真正面から見すえ、あくまで事実に立脚した議論をしなければ、日本に未来はないであろう。議論も許さない「絶対護憲主義」はしょせん戦術論でしかない。正しい歴史的事実に基づき、本質的議論を行うべき時期にきている。〉

 確かに、与党を批判・牽制する政治勢力は、「護憲」を旗印にしてきた。矢部氏は、占領軍が創った憲法を「護る、護る」とだけ言っていたのでは、いつになっても、安保村や原子力村の無言の支配から脱することはできないと言うのである。つくられた過程の状況を丁寧に説明されると、確かに矢部氏の言うとおりかもしれない。

 しかし、現実の政治課題を見てみると、さまざまな疑念が噴出しているアベ政権の安保法案は、明らかに憲法違反で、国が自国の憲法を無視した政策を実施しようとしているのである。そういう現状を目の当たりにすると、「法治国家だろう、憲法を守れ!」と大声で叫ばざるを得ない。

 ここで一つ言えることは「憲法を変えずに護れ」ということと「憲法の条文を守れ、それに従え!」ということは別のことだということである。憲法に従って国の政治を行うことに異論があるようでは、近代国家の仲間入りができない。遵守してもらわなければならないことは当然のことである。

 さて、中身を変えずに護るかどうかであるが、占領軍の押し付け憲法だからできるだけ早く変えなければならないとも言い難い。約70年にわたって、日本人がなじんで、誇りにすら思っていた憲法である。他人の子だと分かっても、自分の子として育ててきた面もある。

 なぜそんなに気に入ってしまったかと言えば、この憲法によって、基本的人権が認められ、絶対権力者の天皇が象徴という柔らかい存在に変わり、軍国主義から文民主義に変わったからである。憲法を押し付けられても、それによって、国民の暮らしは見違えるほど良くなった。

 それにしても、押し付けられたことに気付かないと、そこに付着した負の面が解消できないと矢部氏は説くのである。

 さてこれにて次の見出しへと進みたいのだが、《「押し付け」は、昭和天皇を救うためという側面が強かった》という見出しに対し、この節の要約は説明になっていないと読者の方は思われるだろう。見出しの説明として補足するには、〈マッカーサーは…占領政策に昭和天皇の存在が欠かせないことを知ったはずだ。一方政治日程として東京裁判の開廷が近付いており、アメリカ国内外に、天皇も裁判にかけろという声が強く存在した。そうした事態を避けるために「天皇も日本も将来絶対に軍事的脅威になる可能性はない」という形で新しい憲法をつくる必要があった〉という部分を再録しておこう。

   《憲法という国家の根幹に大きな闇が生まれてしまった
〈まるで軍事行動のようなスケジュールで全体が計画されるなかで、マッカーサーの部下であるホイットニーとケーディスによって憲法草案は作られた。「敗戦国への懲罰」という大きな枠組みのなか、それを逆手にとる形で「人類究極の理想」を憲法に書き込もうとした。また天皇という君主をのこしながら完全な民主主義国として再出発することも憲法に書かなければならなかった。そうしたきわどい目標をクリアするためにはギリギリのバランスで条文を作る必要があった。戦後の日本社会を考える上で、彼らのこの行動は決定的な意味を持っていた。占領軍が敗戦国の憲法草案を書いたという点ももちろん問題だが、それを「日本人自身が書いたことにした」という点が何より問題だ。ひとことで言うと、憲法という国家の根幹に大きな闇が生まれてしまった。〉

   《極限まで簡略化した「日本国憲法の真実」
〈日本国憲法の真実を極限まで簡略化すると、
①占領軍が密室で書いて、受け入れを強要した。
②その内容の多く(特に人権条項)は、日本人にはとても書けない良いものだった。
 ①と②は論理的には矛盾している。①が事実なら②は間違っているはずで、逆に②が真実なら①は間違っているはずだ。これまで②の内容を非常に高く評価し、そのため①の歴史的事実を全否定してきたのがいわゆる左派の人たち。一方①の事実を強調することで②の内容を全否定し、国民に人権を与えすぎているのが気に食わないから、後退させようというのが右派、安倍首相や石原元東京都知事などだ。
 もちろんどちらも間違いで、正しくは歴史的事実をきちんと認めた上で②を超えるような内容の憲法を自分たちで作るというのが、どこの国でも当たり前のあり方だ。

   《事実を公開するアメリカと、隠蔽したまま進んでいく日本
〈占領期に作られた重要な文書はすべて、最初は英語で書かれている。問題はそれが独立後も継続していることだ。日米間の重要な取り決めは、すべて英語が正文、日本語は仮訳という形になっている。日本の国家体制はまずアメリカ側が基本方針を決める。それにあわせて日本側がアレンジする。アレンジして実は自発的にやったんだ、だから対等なんだというフィクションを作る。しかし、アメリカ側はしばらくたつと自分たちが要求したという事実を文書で公開する。一方日本側はアメリカから指示があったことは隠蔽し、すべて日本が主体的に選択したことだと共同体のなかだけで合意する。
 現在の日本の混迷の大きな原因のひとつは、国家全体が過去の記憶を隠蔽・廃棄し、その当然の結果としてインテグリティを喪失した状態になっているというところにある。〉

 残念ながら敗戦が出発点になっているのが現代日本である。戦勝国からの押し付けも少なからずあるであろう。問題は、こうした事実を隠蔽し、主体的に選択したことだとして国民を欺き続けていることである。
 国力として外国が怖れるのは、一握りの政府高官やエリート官僚ではない。その国民の総力なのである。国民に真実を伝えないから、何年たっても植民地、属国のままなのだ。と、私も思う。

   《なぜ日本人は自分たちでまともな憲法を書けないのか
〈人間宣言も日本国憲法も、書いたのは個人ではない。大枠を決めてこれでいけと言ったのがGHQ、その枠の中で自主性を発揮し、アレンジしたのが日本側。これでもう無益な論争に終止符を打つことにしてはどうだろうか。
 問題は、私たち日本人は1946年も、そして2012年(自民党改憲案)も、国際標準のまともな憲法を自分たちで書く力がなかったということだ。正しい意見をくみあげ、国家レベルでまともな憲法を書く能力が、いまも昔も日本にはない。その問題を、これから解決していく必要があるのだ。〉

 私もまったく同感だ。良いところは追認し、ごく一部直すところは直し、付け加える必要があれば加筆し…という日本人の手による憲法づくりはやらなければいけないと思う。だれのためでもない、日本人自身のためにやらなければならないと思うし、民主主義を重んじる精神があれば必ずできると思う。まずは、国際標準に満たない改憲案を作る政党を少数派に追い込まなければならないが・・・


 これにて、ようやく、《 PART3 安保村の謎①-昭和天皇と日本国憲法》が終わりました。できるだけコンパクトに分かりやすくと思っているのですが、それでもこんなに長くなってしまっています。
 日が変わらないうちにUPと思っていましたが、ちょっとばかり間に合わなかったようです。これにて急いで寝ます。おやすみなさい。(今日は暑いので、布団はお腹にかけません (^_-)-☆)

nice!(17)  コメント(14)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 17

コメント 14

BrerRabbit

再開ですね!「日本人の手による憲法づくり」同じ意見です。
今日いや昨日かっフジのミヤネヤつうのがちらっと目に
入ったのですが、何とあのアへが出ているではありませんか!

こいつはホンマに頭逝ってますわっ
こいつの根性は余程小っこいんでしょう
ソーリ草履と持ち上げてくれる処でしかよー話せへん

そんな暇があれば国会の前でこの国の行く末を案じ
自費で各地から集まった多くの人々に頭下げて
意見を聞きにくるのが国を治める人間だと思います。
思い出すだけで腹が立って!

おおっ手洗いにぃ~
そうか暑いから冷たい物摂りすぎたからかぁ
やっぱりお腹に布団は掛けて寝ますね
おやすみなさいです。
by BrerRabbit (2015-09-05 01:18) 

momotaro

またまた深夜にお付き合いいただきありがとうございます。
もう寝ているわけだったのですが、皿洗いとか待っていて、いま歯を磨いています。
布団はやっぱりかけたほうがいいか〜
by momotaro (2015-09-05 01:25) 

SUN FIRST

共感!同感!!
良くぞお書きくださいました。
『問題は、私たち日本人は1946年も、そして2012年(自民党改憲案)も、国際標準のまともな憲法を自分たちで書く力がなかったということだ。正しい意見をくみあげ、国家レベルでまともな憲法を書く能力が、いまも昔も日本にはない。その問題を、これから解決していく必要があるのだ。〉』
 私事、momotaro殿に「アメリカ51番目の州のほうがまだましではないか?」なる失礼なことを申し上げておりましたが、2015年8月30日の国民の意思表示に対する政府の対応のしかたを見ている限り、民主主義とはほど遠い「日本政府の対応ぶり」ではありませんでしたか?
国会運営のあり方にしても「何かに対する迎合一点張り」を見てると、シリアや北朝鮮と変わってないんじゃないかと背筋がぞっとします。
 日本は民主主義に対するまぎれなき後進国だと思うんですよ。(パソコンの変換が「こう深刻」になって困った(笑い))
 違憲論に対しても学者の出す見解を無視して対論も提示せず合憲だとして押し通す・・・。
 北朝鮮のよろこびぐみさえ連想させる自民党議員団ではありませんか?ひたひたと来た道へ逆戻りしているような「貧富」の拡大が、シリアのような独裁政権のなせるわざを日本にも起こしたりはしないのか・・・。
 これ以上書くと、おじいさんは心配性と言われそうだから止めますが、
とりあえず、現政権交代は必須として次が無いではないか!
 momotaro総理に魔女官房長官なら可能だと思いますが。
 

by SUN FIRST (2015-09-05 03:00) 

momotaro

SUN FIRST 様
深夜族健在ですね、私はたまたま目が覚めたにすぎませんが…
良くぞお書きくださいました。とありますが、
『問題は、私たち日本人は1946年も、そして2012年(自民党改憲案)も、国際標準のまともな憲法を自分たちで書く力がなかったということだ。正しい意見をくみあげ、国家レベルでまともな憲法を書く能力が、いまも昔も日本にはない。その問題を、これから解決していく必要があるのだ。〉』
この部分は矢部さんの本に書かれていることですので…
次の内閣の総理はmomotaroではなく、majyoさんです。あの方をおいて考えられませんて。
でもそういう野心なんかあるはずはありませんね。それを説得するのがmomotaroの仕事か〜?
深夜族の夢ですね。おやすみなさい。。。。
by momotaro (2015-09-05 03:48) 

ファルコ84

私もまだこの書を
読んでいる最中で
様々な真実を知ることができ
勉強になります
日本国憲法
昭和天皇・・・
今の安保法制が
何故止められないのかが
見えてくるような気がします。
でも、絶対反対!
分かりやすく纏めて下さいまして
有難うございます。
by ファルコ84 (2015-09-05 11:16) 

トックリヤシ

アメリカさんの属国のままでいたいから、
主体性なんか持ち様がないのですね~、ナサケナイ。。。
by トックリヤシ (2015-09-05 14:07) 

momotaro

ファルコ84様
まだパート4と5があるので、全部終わるのはいつになるやら…?
知らない事実の指摘があるので、端折れないんですよね。
by momotaro (2015-09-05 14:42) 

SUN FIRST

けさは、コメント書き終えてからすぐに物置で野良仕事の準備をして、4時45分かすかに明るくなったところで畑の周囲の除草を開始してから、ダイコンから白菜・キャベツ・ホウレンソウほか葉菜類を播く前処理の耕運施肥を終える12時まで畑にいました。終えて昼食取ったらダウンでいまお目覚めです。
 良くぞお書きくださいましたは(8)全文を指したつもり。
『』は、私のたわごとbollocksを書くための前文として書いたつもりでしたが文章力がない・・・mmmm。
 どうしてもトラウマの731部隊=森村氏も悪魔の飽食を執筆の生体解剖が出てきて、自分を含めて日本の国とその民を信用できない。
 なにはともあれ敗戦によってこの国は少しはまともになったのだと思っていますからこうなります。
 ナチス同様何をしだすかわからぬ国民性については悔いて謝り続けることが殺害した人々に対する国のあるべき姿だと思うのに、70年たったからもうヨカンベーで済ませようとする。
 たしかに日本国民にとっての植民地扱いは不満でありますが・・・。
慙愧しない一部の悪がまた台頭して、アメリカ植民地以下の国をつくりだすのではないかという懸念のほうがどうしてもさきに立ちます。


by SUN FIRST (2015-09-05 16:42) 

majyo

スゴイまとめですね<(_ _)>
ただただ感心し、そして感謝です。

日本の不幸は、これを読めばわかりますが
これとて、国会では知っていても追及できない事です。
矢部さんは、天皇とその側近と書かれていますが
かなり踏み込んでわかっていたと思いますが、
さすがに、書ききれない事もあったでしょう・・・・

この安保法案が、何とかなったら真の独立国となるために
やらねばならぬ事は多いと思いますが今の自民党が改憲したら
また明治憲法に逆戻りです。
危ういです。
早く、真の国民の代表が選ばれるような、政治社会になると良いですね
by majyo (2015-09-05 18:50) 

momotaro

トックリヤシ様
アメリカの1の子分として威張っていたいのですかねー、わからない心理ですね〜
by momotaro (2015-09-05 19:26) 

kazg

スリリングです。
by kazg (2015-09-05 22:13) 

momotaro

SUN FIRST 様
新たなる問題提起ですね
悪魔の飽食、日本人のなした悪行を思うと、只々謝り続けるしかないと…
そうですかねー、悪いことは悪いこと、
断じて許せませんが、身に覚えのないことで卑屈になることはないんじゃないですか?
戦前の日本のことを思うと、アメリカの属国であるほうが安心できるというのも、そうですかねー?
アメリカというのは、ご承知のとおりかなり特徴のある国ですよ。
利己的に世界狭しと邁進している国ですよ。
戦前の日本は、薩長の藩閥から始まって少数の権力者が独裁的に国家を動かして軍事大国化してああなったわけで、多数の日本人の意見が反映されてああなったわけでもないでしょう。
人間は組織化されると弱いので、多くの民の意思と反して、ああいう蛮行をやっちゃったんじゃないですか。
一度の大失敗で民族として卑屈になることなしに、ちゃんと住民多数の意見が反映される国づくりをし直して、日本人の利点を国際社会に発揮できる国の歩みをしましょうよ!
このご意見は、疲労と寝不足からくる気の迷いだと思いますよ!
by momotaro (2015-09-06 00:20) 

momotaro

majyo 様
今の政権の目指す方向は本当に間違っていますよね。それを与党が一体となって支えているのですから、こんな政治集団は、まったく無用の長物です。
丸ごと捨てるしかありません。
今の抗議活動の盛り上がりから恒常的な政治勢力が生まれてくるといいですね *\(^o^)/*
by momotaro (2015-09-06 00:34) 

momotaro

kazg 様
戦後の2、3年は、本当にスリリングだったと思います!
by momotaro (2015-09-06 00:40) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。