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『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』を読んで [『日本はなぜ、「基地」と「原発」を・・・』]

 半月ほど前に『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』(矢部宏治著、集英社インターナショナル発行)を読んだ。たいへん衝撃を受け、早くブックレポートを書かなければと思いつつも、なかなか書き様が浮かんで来なかった。たぶん、衝撃の余り失語症になったのだ。言葉を失っていたのだ。今もそうだが、早く書かなければ…の思いから、言葉を手繰り寄せている。

 この本はブログでも何人かの方がすでに取り上げ、推薦されている。そうでなくても、このタイトルでは、ぜひとも読んでみたい書物ではあった。
「米軍基地と米軍の圧倒的な地位はいつまで続くのか、日本に主体性はあるのか?」は、常日頃気になっていたことである。特に沖縄の基地問題は、第二次大戦の不幸を考えると、なんとしても早期に解決してもらいたい問題である。それが、そういう気配は、日米両政府ともにまったく見えない。
 原発も、あれほどの事故があって国民が悩み苦しんでいるというのに、また、関係者も廃炉に向けてすら手を焼いているというのに、今後どうするかの議論もろくにしないうちに、再開ばかりを前提にことを進めている。まったく不思議なことである。

 これらの答えが、この本には見事に書かれていた。
 たぶんそうなのだろうと漠然と思ってはいたが、それが確かにそうだった。いや、それ以上に、微動だにしない緻密さで、システマティックに厳然とそうなる仕組みが存在していた。
 あー、言葉が、ようやく、段々出てきた。いろいろな思いが浮かんでくる。

 まずは、この本で知った《この国の実態》だが、憲法を最高法規とする民主主義の法治国ではなかった。憲法より上位の取り決めがいくつもあったのだ。だから、憲法の三本柱とされていた、「国民主権」も「基本的人権の尊重」も「平和主義」も、みな、作られた体裁に過ぎなかった。そう教えられ育ってきたことが、今も小・中・高生に教えられていることが、みな、オツベルが白象に履かせた張りぼての靴のような、ヤクザな見せかけに過ぎなかった。
 最高裁判所は、少しも最高ではなかった。踏み込めない領域が、歴然とあったのだ。人権が侵されようが、人命が危険にさらされようが、何も口を出せない領域があったのだ。
 国の要件は、国民と領土と政府だと言われているが、領土には、地図に描かれない大きな穴が開いていた。米軍が管理する巨大な基地や、訓練・離発着に使う空域だ。(「沖縄の地上は18パーセント、上空は100パーセント米軍に支配されている」「首都圏の上空全域が他国に支配されている」)
 政府にも、エリート官僚が多数関わる日米合同委員会という大ボラ穴が開いていた。

 そもそもこの国は70年間、独立していなかった。そのことを国民は何も知らされていなかったのだから、民主主義が成り立つはずもない。国民は騙されていた。いかにも、進歩的な憲法をいただく、三権分立の独立国であるかのように、為政者は国民を騙していた。今も騙し続けている。
 悔しいし、悲しいし、とても、涙なくして語れる話ではない。

 この本は、こうしたこの国の実態を、長年、編集・出版に携わってきた著者が、これまでの調査・研究によって得られた各種の資料に基づいて、多くの日本人にわかるように、きちんと説明してくれている。読めば、そして実態を知れば、私のようにしばし言葉を失いかねないが、それでも、ものごとを改善するには、真実を知らなければ始まらない。この本は、自民党政治家と中央官僚という日本の政治のプロが唯々諾々と何年でもただ従って、自分達のこの国での優越的地位を保っているだけの大きな矛盾があることを、本来の主権者国民に、広く教えてくれるたいへん貴重な書物だ。《戦後を生きる日本人必読の書》ではないかと思う。
 
 興味のある方は、是非原物を読んで確かめていただきたい。
(やっといくらか言葉が戻ってきたところなので、今宵はこれまでと致します。燦Q)

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majyo

momotarou様
ありがとうございまーす<(_ _)><(_ _)>
本は読んだけれど小間物屋ブログのマジョには到底書けないので
「放射線治療の合間に」のブログで読み始めた事を知り、
待ってましたーヽ(^o^)丿

これは読み終わったら脱力感に襲われ、そして悲しくなりました。
でも、これからですよね
日本の未来を考えると、悲しんでばかりもいられません。

先ほど出先で読みましたから、ご承諾いただかないうちに
勝手に紹介記事書きました。
よろしくお願いいたします。
同志よ! ありがとう<(_ _)> エヘヘ

by majyo (2015-03-01 18:20) 

momotaro

マジョ様 お手をお上げくだされ!
それがしのしていることは微々たること。
毎晩なにかと生き生きとした情報をいただいております。
また、過分なるご紹介をいただき、感謝申し上げるのは
こちらでございます。<(_ _)><(_ _)> エヘヘヘ 
by momotaro (2015-03-01 18:37) 

gonntan

私もこの本とこの書評がたくさんの方に読まれて欲しい!!
この国を支配する者たちの姿をしっかり現実として見て欲しい!!!
それからどっちに行くべきなのか、自分のこととしてみんなが
考えて欲しいです
by gonntan (2015-03-01 19:17) 

トックリヤシ

ピンホールから光が見えてくるかな・・・?
by トックリヤシ (2015-03-02 20:57) 

momotaro

gonntan さま
「 この国を支配する者たちの姿をしっかり現実として見て欲しい!!!
 それからどっちに行くべきなのか、自分のこととしてみんなが
 考えて欲しいです  」
おことばありがとうございます。
by momotaro (2015-03-04 14:16) 

momotaro

トックリヤシさま
コメントありがとうございます。
著者の矢部先生は指針を示してくれています。
しかし、今の段階では、やはりピンホール状態でしょう。
こうなったら外の光を当てにせず、暗闇をうごめく我々自身が
それぞれに光を放ちながら進んで参りましょう。
「あかりをつけましょ ぼんぼりに
お花をあげましょ momoの花…」
今日はおりしも雛祭りでした。燦Q
by momotaro (2015-03-04 14:28) 

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