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学ぶ者を遠ざけた?国際単位の導入 [教育関連]

前置きが長かったですが、理科離れの原因の一つになっているのではないかと指摘したいことは単純です。中学で教えている理科です。

理科は生物、地学、化学、物理と大きく4分野に分かれています。動植物を扱う生物は小学校ではフィールドワークもあり、昔より充実しているように思います。

化学は進歩してますからね、知識として教えることが増えました。増えすぎて消化不良になっているかも知れません、特に高校段階では。

気になっているのは物理の分野です。
質量と重さは違う概念であることが教えられます。

質量はご存知、グラムという単位で表されます。一方重さは、その質量の物体を支える力の大きさとして、かつてはグラムに重をつけてグラム重という単位で表していました。たとえば100gの物体があるとすると100gが質量で、100g重がそれを支える力の大きさということです。

重が何かということは高校で教えられました。
まず力を表す単位として、1kgの質量を持つ物体に1m/s²の加速度を生じさせる力を1N(ニュートン)とすることが教えられます。

地球の重力加速度がどれほどかというと、真空中の落下物が1秒につき約9.8m/sずつ速さを増すことから、約9.8m/s²であることを学びます。

そうすると、1kg重は約9.8Nと変換されることになります。

今は中学校段階からN(ニュートン)が登場します。つまり「重」は廃棄されました。

力の単位Nはどのように登場するかというと、1kg重は約9.8Nですからざっくり言えば10Nです。ということは1Nは100g重です。

このことから100gの物体を支える力の大きさ=1N
という関係で力の大きさを機械的に表すこととされます。

重力加速度も9.8という数字も登場しません。

これだけのことならそれほどの大問題=撹乱材料でもありませんが、力の大きさの次に圧力を習います。

圧力は単位面積にかかる力の大きさのことで、かつては1㎠ 当たり何g重の力がかかっているか、つまりg重/㎠ という単位で捉えていました。

今はN/㎡ 、つまり1㎡当たり何Nの力がかかっているかで捉えます。これが圧力の大きさを表す単位 Pa(パスカル)であることも教えられます。

「はあはあ、そうですか」という程度の話ですが、これが生徒に与えられる問題となると、例えば、底面が5㎝ × 10㎝、高さが8㎝の直方体の物体の質量が350gだとすると、底面の圧力の大きさは何Paか?となります。

かつての正解は350g重 ÷ 50㎠ で7g重/㎠でした。つまり1㎠当たり7g重の力がかかっていると理解できます。

今は、質量350gの物体が面に及ぼす力の大きさは3.5Nです。底面が何㎡かというと、0.05m × 0.1m = 0.005㎡ です。
3.5N ÷ 0.005㎡ で計算されます。答は700Paです。

つまり1㎡当たり700Nの力が働いているということです。かなり煩わしい計算をして、ピンとこない答えが正解となります。

この改変は国際単位に早くから馴染ませようという目的でなされたものと思いますが、しかしどうですか、学ぶ者を遠ざけていませんか?

学ぶ者からすると、身近であるべき物理が、十代半ばで遠くに行ってしまったという印象を持ちませんかねぇ?
心配です。

同じことが熱量の単位でも起きていますが、その説明は次回に回すことにして、取り敢えずこれにて投稿しておきます。

ご感想をお聞かせいただけましたら幸いです。


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コメント 10

majyo

改めて考えるとモモタロウさんはバランスの取れたかたです
そうでない官僚が多すぎるし
前川喜平さんに匹敵するこころ強い方です。
学問に関してはナンも言えねえ
by majyo (2019-01-16 09:27) 

ファルコ84

馴染まさせようとした国際単位が
学ぶ者を遠ざけてしまったんだとしたら本末転倒ですね。
上文、読むうちに少々頭が!!!!
うーん、もっと働かせねばなりません。
by ファルコ84 (2019-01-16 10:26) 

gonntan

まるっきりの門外漢なので「・・・・・」です
物理は数学的素養というか理解力がないと
グンモウ象をなぜるに等しいですね
by gonntan (2019-01-16 22:27) 

momotaro

majyo さんへ

改めて考えてみるとモモタロウは
専門が無い中途半端人間なんです。
> 前川喜平さん・・・
官僚には珍しく信念を持った方ですね。
> 学問に関してはナンも言えねえ
説明が悪かったかな
詳しく書くと長たらしくなるし、簡単にしようとすると飛躍が多くなるし・・・
力量不足でした。m(_ _)m
by momotaro (2019-01-17 14:42) 

momotaro

ファルコ84さんへ

いずれは国際単位に繋がなければいけませんが、親近感が大事ですからね。
理解しやすいところから繋いでいって欲しいと思います。
ご感想をお寄せいただきありがとうございます。
by momotaro (2019-01-17 14:43) 

momotaro

gonntan さんへ

ニュートンがリンゴの落ちるのを見て引力を発見したという、日常の当たり前を説明しようという学問ですから、どういう捉え方をして当たり前を説明していくか、分かりにくいことではあると思います。
でも、大掴みにすると、色即是空、空即是色ですから、御上人様のほうが詳しいかも知れません。
by momotaro (2019-01-17 14:55) 

Enrique

質量と力の混同は避けなければいけません。私も中学までは力の単位はkg重で良いと思います。もちろん,kgとgの換算,mとcmの換算は必要です。力はNにしてしまおうというわけですね。私もゆくゆくはSI単位に慣らせないといけないとは思いますが,おっしゃる通り初等教育段階では実感が伴わなければダメだと思いますね。9.8は大体10というのは,分かっている人がやる分には良いのですが,まっさらな中学生にこれを機械的にやっちゃうのはまずかろうと思います。かつては高校段階でも重力加速度を10m/s^2と教えるのはまずいという議論があったと思います。100g=1Nと誤解してしまったら大変なことですが。何が何でもNを使わせたいということのようですね。逆に高校段階で重力を学ぶときに障害にならないかしら?とも感じます。高校段階で物理が極端に嫌われていますが,中学段階でもこれをやったら理科離れの一因になるような気はします。
私は,基本的にはSI単位系を使うべきと考えています。実用単位系があって,部分的には便利だが包括的に見るとSI系が良いとわかるまでガマンして導いて行かないといけないと思います。
慣用単位もいまだに使われている事実も無視できませんね。
kg重どころか何kgの力とか何トンの力とか平気で言います。英米圏ではポンド重がいまだに使われていますので,Nに統一しちゃうと,日本人にとっては二重の障壁になりますね。
by Enrique (2019-01-18 07:05) 

kazg

>身近であるべき物理が、十代半ばで遠くに行ってしまったという印象
まったくです。
理数嫌いの始まりが、より低年齢化しそうです。
by kazg (2019-01-18 13:56) 

momotaro

Enrique さんへ

> 中学までは力の単位はkg重で良いと思います。
> 初等教育段階では実感が伴わなければダメだと思いますね。
> 9.8は大体10というのは・・・
など賛同のコメント、大変ありがとうございます。
> 高校段階で物理が極端に嫌われていますが,中学段階でもこれをやったら理科離れの一因になるような気はします。
どうして理科を教える人たちがこのような変更をやってしまうのでしょう?不思議です。政治家?文部官僚?の意向がそのまま?
> SI系が良いとわかるまでガマンして導いて行かないといけないと思います。
全く同感です。
> 英米圏ではポンド重がいまだに使われていますので・・・
追加情報ありがとうございます、知りませんでした。
by momotaro (2019-01-19 05:56) 

momotaro

kazg さんへ

>理数嫌いの始まりが、より低年齢化しそうです。
高校で物理をとる人が少ないので中学段階から国際単位を教えることにしたのでしょうか?
だとしたら考え方が安易に過ぎます。逆効果です。
目の前にチラつかせても理解できなければ何にもなりません、却って疎まれるだけですよね!
by momotaro (2019-01-19 06:01) 

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