これでいいのか高校数学? [教育関連]
最近気になっていることは教育の劣化です。
教育の劣化というと忠君愛国を美徳とする教育理念の復活が一番懸念されます。それはアベ政権のやらんとしている教育の改変で、警戒を要することは間違いありません。
このことの他にも気になっていることがあります。それは、現場の学習指導そのものの劣化です。
前回挙げたさくらんぼ計算については、計算のやり方のヒントとして教える分には意義がないわけではないでしょう。呉々も過度に修得を強制しないことを願います。算数嫌いを産まないために。
さて、今日挙げる例は、高校生の数学です。
具体的にお伝えするために資料も多くなり、小難しくもなりますので、最初に趣旨を述べておきます。
高校生の数学は分野が多過ぎませんか?
一つ一つの分野の基礎理解が難解なうえ、入試の過去問が学習対象に含まれるため、応用問題も難解になっています。
数学が考える科目から広範な知識とテクニックを覚える科目になってしまっています。生徒にしてみると、その分野を味わったり感動したりする暇がなく、次から次へとただ授業や教材やテストに対応しているだけになってしまっているのではないでしょうか。
先生にしてみると、数学の分野を次から次へと洪水のように教えまくり、テストをし、再テストをし、結局は数学の真髄の何たるかも伝えられず、数学離れ、理系離れの一因を、自ら作ってしまっているのではないでしょうか?
以上が趣旨です。
まず分野が多すぎる点です。
一年生で学ぶ数学1の内容は以下のとおりです。
1.数と式
数と集合 - 実数、集合
式 - 式の展開と因数分解、一次不等式
2.二次関数
二次関数とそのグラフ
二次関数の値の変化 - 二次関数の移動、最大・最小、二次方程式・二次不等式
3.図形と計量
三角比 - 鋭角の三角比、鈍角の三角比、正弦定理・余弦定理
図形の計量
4.データの分析
データの散らばり
データの相関
これだけでもかなりの分量です。
正弦定理は
a/sinA=b/sinB=c/sinC=2R
余弦定理は
a二乗=b二乗+c二乗-2bccosA
という三平方の定理を一般化したものです。
これらの学習の他、数学1と並行履修、あるいは数学1を履修した後に履修させ、3項目中2項目以上を選択履修させることとされている数学Aがあります。
数学Aの内容
1.場合の数と確率
① 場合の数(数学A)
集合の要素の個数
和の法則・積の法則
順列:円順列、重複順列などを含む
組合せ
② 確率
確率とその基本的な法則(数学A)
独立な試行と確率(数学A)
条件付き確率(数学C):確率の乗法定理を含む
2.整数の性質(新規)
約数と倍数
ユークリッドの互除法
整数の性質の活用:n進法など
3.図形の性質
三角形の性質:重心,内心,外心など(数学A)
円の性質:四角形が円に内接する条件、方べきの定理,二つの円の位置関係など(数学A)
作図(復活)
空間図形(新規):空間における直線と平面、多面体
3項目中2項目以上とありますが、いわゆる進学校の多くが全部やっているようです。
このうち例えば整数の性質では、こんな問題を解きます。
5x+8y=3 の整数解を全て求めなさい。
風呂にでも入りながらゆっくり考えたいところですがそんな暇はありません。すぐに解き方が教えられ、類題が与えられます。
解き方は、まず解答例を一つ見つけます。
例えば x=-1 y=1
これを問題の式に代入します。
-5+8=3
問題の式からこの式を、辺ベン引きます。
5x+5+8y-8=0 すなわち
5(x+1)+8(y-1)=0という式が、
さらに移項すると
5(x+1)=-8(y-1) という式が得られます。
この両辺が等しくなるということは
x+1は8の倍数だということになります。
そこで kを任意の整数として
x+1=8k と置きます。
これを左辺に代入すると
y-1=-5kとなります。
このことからx=8k-1
y=-5k+1 となり、これが求める答です。
一つしかない二元一次方程式の整数解はこのやり方で求めれば良いわけですが、こうしたことが次から次へと教えられ、類題で修得することが求められます。
問題のパターンに対して解き方の技法を身につけることが数学学習の中身になっています。興味を持ったり本当に身につけたりすれば意味のある学習ですが、次から次へと提示されると、一過性のテスト対策で終ってしまいます。
入試で目新しい問題を出題するとそれが学習項目に付け加えられ、その繰り返しで、何年もかけてこのように学習分野が広がってきたのでしょうが、現場で教えている数学の先生方は、どうお感じなのでしょうか?
空しさを感じながらも現役合格率アップというノルマを達成するために、ただ機械的に技法伝授をしているのではないでしょうか。
教育にはあちこちに問題がありますが、今日は高校数学のテクニック偏重を取り上げてみました。
皆様のご意見もお聞かせいただければ幸いです。
教育の劣化というと忠君愛国を美徳とする教育理念の復活が一番懸念されます。それはアベ政権のやらんとしている教育の改変で、警戒を要することは間違いありません。
このことの他にも気になっていることがあります。それは、現場の学習指導そのものの劣化です。
前回挙げたさくらんぼ計算については、計算のやり方のヒントとして教える分には意義がないわけではないでしょう。呉々も過度に修得を強制しないことを願います。算数嫌いを産まないために。
さて、今日挙げる例は、高校生の数学です。
具体的にお伝えするために資料も多くなり、小難しくもなりますので、最初に趣旨を述べておきます。
高校生の数学は分野が多過ぎませんか?
一つ一つの分野の基礎理解が難解なうえ、入試の過去問が学習対象に含まれるため、応用問題も難解になっています。
数学が考える科目から広範な知識とテクニックを覚える科目になってしまっています。生徒にしてみると、その分野を味わったり感動したりする暇がなく、次から次へとただ授業や教材やテストに対応しているだけになってしまっているのではないでしょうか。
先生にしてみると、数学の分野を次から次へと洪水のように教えまくり、テストをし、再テストをし、結局は数学の真髄の何たるかも伝えられず、数学離れ、理系離れの一因を、自ら作ってしまっているのではないでしょうか?
以上が趣旨です。
まず分野が多すぎる点です。
一年生で学ぶ数学1の内容は以下のとおりです。
1.数と式
数と集合 - 実数、集合
式 - 式の展開と因数分解、一次不等式
2.二次関数
二次関数とそのグラフ
二次関数の値の変化 - 二次関数の移動、最大・最小、二次方程式・二次不等式
3.図形と計量
三角比 - 鋭角の三角比、鈍角の三角比、正弦定理・余弦定理
図形の計量
4.データの分析
データの散らばり
データの相関
これだけでもかなりの分量です。
正弦定理は
a/sinA=b/sinB=c/sinC=2R
余弦定理は
a二乗=b二乗+c二乗-2bccosA
という三平方の定理を一般化したものです。
これらの学習の他、数学1と並行履修、あるいは数学1を履修した後に履修させ、3項目中2項目以上を選択履修させることとされている数学Aがあります。
数学Aの内容
1.場合の数と確率
① 場合の数(数学A)
集合の要素の個数
和の法則・積の法則
順列:円順列、重複順列などを含む
組合せ
② 確率
確率とその基本的な法則(数学A)
独立な試行と確率(数学A)
条件付き確率(数学C):確率の乗法定理を含む
2.整数の性質(新規)
約数と倍数
ユークリッドの互除法
整数の性質の活用:n進法など
3.図形の性質
三角形の性質:重心,内心,外心など(数学A)
円の性質:四角形が円に内接する条件、方べきの定理,二つの円の位置関係など(数学A)
作図(復活)
空間図形(新規):空間における直線と平面、多面体
3項目中2項目以上とありますが、いわゆる進学校の多くが全部やっているようです。
このうち例えば整数の性質では、こんな問題を解きます。
5x+8y=3 の整数解を全て求めなさい。
風呂にでも入りながらゆっくり考えたいところですがそんな暇はありません。すぐに解き方が教えられ、類題が与えられます。
解き方は、まず解答例を一つ見つけます。
例えば x=-1 y=1
これを問題の式に代入します。
-5+8=3
問題の式からこの式を、辺ベン引きます。
5x+5+8y-8=0 すなわち
5(x+1)+8(y-1)=0という式が、
さらに移項すると
5(x+1)=-8(y-1) という式が得られます。
この両辺が等しくなるということは
x+1は8の倍数だということになります。
そこで kを任意の整数として
x+1=8k と置きます。
これを左辺に代入すると
y-1=-5kとなります。
このことからx=8k-1
y=-5k+1 となり、これが求める答です。
一つしかない二元一次方程式の整数解はこのやり方で求めれば良いわけですが、こうしたことが次から次へと教えられ、類題で修得することが求められます。
問題のパターンに対して解き方の技法を身につけることが数学学習の中身になっています。興味を持ったり本当に身につけたりすれば意味のある学習ですが、次から次へと提示されると、一過性のテスト対策で終ってしまいます。
入試で目新しい問題を出題するとそれが学習項目に付け加えられ、その繰り返しで、何年もかけてこのように学習分野が広がってきたのでしょうが、現場で教えている数学の先生方は、どうお感じなのでしょうか?
空しさを感じながらも現役合格率アップというノルマを達成するために、ただ機械的に技法伝授をしているのではないでしょうか。
教育にはあちこちに問題がありますが、今日は高校数学のテクニック偏重を取り上げてみました。
皆様のご意見もお聞かせいただければ幸いです。
てんで歯が立たない。意見も出ない
友だちだったら、教えてと傍にくっついただろうなあ
by majyo (2018-12-04 10:11)
高校時代、数学の授業は嫌いでした。
全然理解できないまま卒業しましたが、今でも特に困っていませんねど。。。vv;
by トックリヤシ (2018-12-04 20:44)
私も数学には苦労しましたが,重要なのは論理的思考能力だろうと思います。すぐに忘れてしまう小手先のテクニックなど時間の無駄だと思います。批判精神を無くすための教育のようです。
ゆとり教育の検証もないまま。
by Enrique (2018-12-05 07:39)
中学の数学までは大好きだったんですが
高校で大嫌いになってしまいました、出来なかったんですね!
学校教育が受験に向かって走り過ぎるあまり
方向性を見失っているように感じます。
by ファルコ84 (2018-12-05 10:09)
数学は嫌いではありませんでしたが、数学の授業は嫌いでした。どんどん興味もなくなり、文系になりました。私が知りたかったのは、例えば「関数」という言葉でも、その語源、意味、何を堂伝える為の記号であるか、その背景を知りたかったのです。公式を覚えて演習問題を解くのではなく、どうしてその公式ができたかを知りたかった。
説明はなく、解法、手順が説明されるばかりでした。分裂思考の私は、せっかちであるため計算ミスが多く、理屈は分かったつもりになっても、誤答になったり途中で計算ができなくなったりしました^^;
それでも大学生になってから「鶴亀算」だけはしっかり克服しました^。^
by アヨアン・イゴカー (2018-12-05 10:18)
ああわけわからん!
私、やや複雑な因数分解でつまづきました
by kazg (2018-12-05 10:50)
majyo さんへ
majyo さんが「歯が立たない」ようなことを次から次へと出題して解き方を教えて・・・というのは、やはり問題が多いですよね。
by momotaro (2018-12-06 05:58)
トックリヤシさんへ
> 今でも特に困っていませんけど。。。vv;
そうですよね、特殊な職業の人しか直接は使いませんよね。
でも考え方は大事だと思うのですが、解き方をひたすら覚える方式ですからね、空しいですよね
by momotaro (2018-12-06 05:59)
Enrique さんへ
> 重要なのは論理的思考能力だろう・・・
ですよね、ところが技法を教えてその練習問題ばかりです。
> ゆとり教育の検証もないまま。
ゆとり教育に舵を切った理由も釈然としませんし、その検証も仰るとおりしないまま詰め込み教育に戻っています。
指導要領や教科書検定、全国学力テストなどで教育が画一化されていること、その時代による変化・振れ幅が大きいことが問題だと思います。
by momotaro (2018-12-06 06:01)
ファルコ84さんへ
> 中学の数学までは大好きだったんですが
高校で大嫌いになってしまいました
中学まではスローテンポ、それが高校に進学すると学力別になることもあり、超ハイスピードに変わります。どの科目も専門の先生が手ぐすね引いて待っている感じになり、たいていの科目が急に難しくなってしまいます。
多くの生徒が未消化で終わってしまっているのではないでしょうか。
仰るとおり、学校教育が受験対策で方向性を見失っているところがありますよね、特に私立はそうなってます。
by momotaro (2018-12-06 06:03)
アヨアン・イゴカーさんへ
> 数学は嫌いではありませんでしたが、数学の授業は嫌いでした。
技法の伝授に終始しますからね、真髄を伝えようという授業は稀ですから。
> どんどん興味もなくなり、文系になりました。
数学を採るかどうかで文理が分かれますから、そうなりますよね。
イゴカーさんのような方の関心に応えられるような数学の授業を期待したいものです。
> 説明はなく、解法、手順が説明されるばかりで
それで計算ミスがあるとバツになりますから、段々やる気もなくなってきますよね。
数学の先生には数学の裾野を広げることを考えて欲しいですよね。
> それでも大学生になってから「鶴亀算」だけはしっかり克服しました^。^
そういうのが本物の学習ですよね、生涯学習、楽しくやりましょう。
芸術をときどき勉強させてもらってます!
ご感想ありがとうございました!
(他の方もそうですが)
by momotaro (2018-12-06 06:08)
kazg さんへ
貴兄は文学の人ですから。
因数分解はいくら複雑になっても心を奮わせるものは出て来ませんものね、興味も薄らいだことでしょう。
数学は黒か白か、微妙な味わいはありませんから・・・
by momotaro (2018-12-06 06:11)