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『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』を読んで その28 [『日本はなぜ、「基地」と「原発」を・・・』]

   《 PART5 最後の謎-自発的隷従とその歴史的起源》(4)

 時間がなくてしばらく放置してしまいましたが、最後の部分をご紹介します。

《「逆コース」の結果、戦後日本のなかに大きな矛盾が生まれてしまった》

〈「日本の本土への米軍駐留」をめぐって生じた昭和天皇とマッカーサーの対立は、結局、昭和天皇の勝利に終わる。冷戦の始まりによってアメリカの世界戦略が変わり、対日軍事政策も、従来のマッカーサー路線(本土は非武装化し、代わりに沖縄を軍事用差異化する)から、冷戦対応型の新しい路線(沖縄にも本土にも巨大な米軍基地を置き、日本全体を反共の防波堤にする)に方向転換したからだ。
 昭和天皇がダレスへ秘密メッセージを送った翌年の四月、マッカーサーはトルーマン大統領から電撃的に解任される。直接的な理由は朝鮮戦争におけるシビリアンコントロールを無視した行動だったが、トルーマンが自信を持ってこの「第二次大戦最大の英雄」を解任できた背景には、すでに昭和天皇と日本の支配層が軸足をダレスに移していたこともあっただろう。
 こうして占領期中に起きたアメリカの国家戦略の大転換によって、戦後日本という国家の中に、
「すべての軍事力と交戦権を放棄した憲法九条二項」と、「人類史上最大の攻撃力を持つ米軍の駐留」が共存するという、極めて大きな矛盾が生まれてしまった。そうした矛盾を内包したまま、「米軍が天皇制を守る」という非常に歪んだ形で、戦後日本(安保村)の国家権力構造が完成することになった。〉

 要約であるかのような体裁で書きましたが、実は3行端折って、デスマス体をダ体に変えただけです。
 今、265ページまで来ました。本論の最後は279ページ、あと14ページを残すのみとなりました。本書の大半は、広範な事実の指摘に費やされていますので、もともと要約しにくい本でしたが、最後のまとめと今後の提言については、更に要約する余地が少なく、少々縮めて私が要約したかの如くすることは、著作権の侵害になってしまうと思います。
 そこで、この先は、最後の引用を除いて、見出しのみご紹介しますので、ぜひ、原本(集英社インターナショナル出版、矢部宏治著、『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』)で直接内容をご確認ください。
IMG_3373.jpg


《民主主義世界のリーダーから、「基地帝国」へと変貌したアメリカ》

《日本国憲法のふたつの欠点》

《九条二項の負の起源、「連合国による武装解除」》

《本当の意味での「戦後体制からの脱却」とは》


 これが最後の見出しです。ここから次のメッセージを引用させていただき、本書のご紹介記事の終了といたします。あとは声を掛け合って賛同者を増やし、マスコミや政治家を動かすだけです。共に頑張りましょう!

《唯一、状況を反転させる方法は、憲法にきちんと「日本は最低限の防衛力を持つこと」を書き、同時に「今後、国内に外国軍基地をおかないこと」を明記すること。つまり「フィリピンモデル」です。
そして米軍を撤退させ、米軍駐留の結果として機能停止状態に陥った日本国憲法の機能を回復させる。日本が再び侵略的な戦争する国になることを防ぎ、加えて「大地震の活動期を目前にした原発再稼働」という狂気の政策を止めるには、この方法しかありません。
なぜ私がそこまで断言できるかというと、戦後世界において巨大な帝国に占領され、主権を失った国が、主権を回復するための「唯一無二のセオリー」だからです。憲法を自分たちの手で書き、それに基づき占領軍を撤退させる。それしかないのです。》

《私たちが、はっきりと自分の意思を表明すれば、必ず状況は大きく動き始めます。
「この改正憲法の施行後、外国の軍事基地、軍隊、施設は、国内のいかなる場所においても許可されない」
この条文を一行、憲法に書き込むことができれば、それでゲームセット。この長い長い戦後の対米従属の物語と、米軍と日本の支配層が一体化した安保村の歴史も、終わりを迎えることになるのです。同時にアメリカ国民自身が被害者であるアメリカの基地帝国化も、縮小の方向へ向かうでしょう。だからゴールの姿は見えている。後は逆算して、どうすればそこにたどり着けるか、考えればいいだけなのです。》

 と、矢部先生はしっかり処方箋を書かれています。処方箋は明快なのですが、実際にこれを実施し身体を治すのは患者本人です。
 すなわち、日本国民が認識を共有し、処方箋を受け入れ、日々の生活でその実現を目指さなければなりません。この認識が国民の常識となり、この処方箋の実現を大半の国民が望むようになるまでには、これから、大いなる努力が必要となります。まずは、教員や報道関係者の認識を変えていく必要があるでしょう。
 当然、妨害も予想されます。
 しかし、幾多の試練を乗り越えてでも、これは果たさなければならない戦後日本の、日本人の課題です。共に頑張りましょう!

 続けて書けなくて申し訳ありませんでした。
 ご訪問に感謝いたします。


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gonntan

日本の右翼の不思議さは「独立」を掲げないこと
そこに今の政治状況が表れているのであって
主権の回復なくして戦後レジームからの脱却はなし!
ですね。
by gonntan (2016-08-25 21:42) 

ファルコ84

この書は基地と原発の事実に目を向け
多くの知らなかった事を知らせてくれる
教科書のような存在です。
安倍政権がもくろむ憲法改悪でなく
日本国憲法の機能回復を目指して
国民が一体となっての
行動に力を合わせて行きましょう。
分かり易い解説ご苦労様でした。
by ファルコ84 (2016-08-25 22:30) 

momotaro

gonntan さま
> 日本の右翼の不思議さは「独立」を掲げないこと
まったく、他国に牛耳られていることを見過ごしていて、どこが愛国者なんでしょうか?
> 主権の回復なくして戦後レジームからの脱却はなし!
イロハのイができていないんですよね。
県民の意向を無視して基地建設を強行するより、そこを謙虚に反省すべきです。
by momotaro (2016-08-26 06:31) 

momotaro

ファルコ84さま
> この書は基地と原発の事実に目を向け
多くの知らなかった事を知らせてくれる
教科書のような存在です。
同感です。「現代社会」とか「公民」とかの教科書または参考資料にすべきです。日本国憲法だの、三権分立だの、選挙制度だのを教えても、その上があるのですから、それを教えなくては話になりません。
国を美化して、さらに「美しい国」を目指すなど、嘘もいい加減にしろ!
ですよね。
by momotaro (2016-08-26 06:32) 

トックリヤシ

妨害・・・、現実に政権相抱えで妨害作戦を展開しているのでしょうネ
永田町でも沖縄の基地前でも、出る釘はことごとく打ち砕かれています。
教員・報道関係者の認識を変える有効な手立てはないものでしょうか。。。
by トックリヤシ (2016-08-26 10:29) 

majyo

マッカーサーの頭越しの昭和天皇からダレスへの書簡は
昭和天皇とそのグループの勝利ですが
日本の戦後にとっては、禍根を残すことになったと思います
フィリピンモデル、その通りですね。
何故フィリピンが出来て、日本が出来ないのか?
しようとしないからだと思うのです。アメリカ寄りの人々が多かった
矢部さんの二冊目は補足的ですから、
先ずはこの本とこの解説を読んで頂くことが一番です

by majyo (2016-08-26 15:07) 

momotaro

トックリヤシさま
「妨害も予想されます」どころではありませんね。
戦勝国の軍部と日本の「保守」党とが、あの手この手で妨害してきますね。しかしどちらも理屈が通りませんよね。
> 教員・報道関係者の認識を変える有効な手立てはないものでしょうか。。。
地味ですが、出版活動やネットでの情報発信、コメンテーターの発言などが、次第に変えていくのではないでしょうか。
マンガ雑誌や週刊誌などが取り上げてくれてもいいですよね。
いろいろ期待しましょう!

by momotaro (2016-08-26 18:36) 

Enrique

氏は処方箋を示していますが,処方箋が示されても,その薬を処方して飲むなり,病巣を切り取る手術をするなりしないといけません。密約が憲法の上位にあり実質上憲法が崩壊しているというのが筆者の見立てですが,それが,憲法改正さえすれば本当に治るのかどうか。改憲派に悪用されかねません。危ない橋を渡らないとダメだとして,もしおかしな連中に触らせないで良く直したとして,即大丈夫か?という問題もあります。

従来その処方箋どころか,症状がふつふつと見えても,その病気の原因すら探らせず,ひたすら国民の目に触れぬよう伏せて来た密約の歴史を暴いた点では著者を高く評価します。日本人がやって来た事と言えば,子供を不幸にしたくないのでなるべく子供は持たないという事かもしれません。そのうち近年では子供を持ちたくても持てない,そもそも結婚が出来ない若者が増えています。しかし,世の雰囲気は,なにやら正論を言いにくいが,バカ殿様に合わせていた方が安心だと。まず,こういう風潮を変えないとだめでしょう。オリンピックだSMAPだとほだされて本質的な議論を避け続けている日本人は,ガツンとやられないと気がつかないのだと思います。バカ殿様が長持ちして,賢い人はすぐ引きずりおろされるのはなぜなのか?自分の頭で考えることをしないと。騙されても平気な顔をしている日本人。騙され続けても平気な日本人なら仕方が無いのかもしれませんが。

親の政治的見解に子供もなびくのは情けない事です。かつてなら,子供は親に反発する(表向きはしなくても反対の意見を持つことは普通だったと)のが普通だったと思います。武力よりも知恵の方が遥かに大事なのに,どんどんおバカになり,軍事に金を掛けると。相手を攻撃するのではでなくて,しっかり議論する習慣をつけないとお互い消耗するばかりなのに。ゆとり教育の反動が,またぞろ詰め込みではなく,しっかり考えさせ,自分の意見をはっきりと述べさせることでないといけません。正義感の無い若者が多いと思いますが,大人のひどさを反映していると思います。交通マナーの悪いのは老人ばかり。

憲法の崩壊国家から立ち直れません。憲法より上位のわけわからん長いものがあるのだという人が結構います。そういう意識を直さないで,小手先で憲法を書き直すのは危険だと思います。天皇の生前退位まで改憲に利用しようという輩が勢力を持つのですから。自ら正さなければならないのに,自ら進んで隷属状態を望むのですから。良かれと思ってやっている事が,沖縄はもちろん日本の為にならないどころか,アメリカの為にも世界の為にもならないのに。一時の鬼畜米英が,一瞬で絶対的神のような存在になって70年も持つ。本当に世にもおかしな国民です。強いものについて自分だけうまくやろうという恥ずべき性根を持った者たちが,偽りの愛国心を煽り,またそれに喜んでついて行くのですから。

憲法9条の第2項を変えれば全てが上手く行くと。外国軍隊の駐留を認めないと書けばOKと。おかしな方向に憲法を変えずにそれを書けるかどうかという問題と,うまく憲法を書き替えれば,憲法が密約体系の上になれるのか?という疑問は残ります。
by Enrique (2016-08-26 21:24) 

momotaro

majyo さま
> 昭和天皇からダレスへの書簡は…日本の戦後にとっては、禍根を残すことになったと思います
国体を変えない(天皇制存続)のために勝ち馬に乗ることを考えたのでしょう。国の主体性を回復することは後回しにされてしまった。その延長線上に今日があるのでしょう。
> 何故フィリピンが出来て、日本が出来ないのか?
日本の「保守」政治が戦勝国を利用し過ぎた、頼りにし過ぎたのでしょう。
> 先ずはこの本とこの解説を読んで頂くことが一番です
ご推薦、ありがとうございます!
by momotaro (2016-08-26 23:00) 

momotaro

Enrique さま
ご意見投稿ありがとうございます。大変参考になりました。
著者は一連の重い事実の指摘の手前、解決法はあるのだ、それも決して難しいことではないという角度から、問題の解消法を提示しています。
しかし71年間改めらることがなく、その気運すら起こらなかったことですので、ご指摘の通り問題点は多々あると思います。
特に憲法改正の必要性は、改悪を目指す勢力に利用される危険性があります。
今後の課題解決に向けての大変重要なご指摘ですので、「処方箋に問題あり」ということで、改めて記事にし、考察したいと思います。その際はこのコメントを丸々転記させていただく積りですので、よろしくお願いいたします。
難しい問題です。よく考えて出発するに越したことはありません。
今後ともご意見をお聞かせください。
「世にもおかしな国民」のこと、共に考えて参りましょう!
by momotaro (2016-08-27 06:40) 

kazg

簡単にはコメント書けななくて、ワンパスしましたが、やはり、意見まとまりません。ゆっくり考えることにします。
by kazg (2016-08-27 10:01) 

えんや

momotaroさん
 ありがとうです。
 宮城県の女川原発の30キロ圏で女川原発の再稼働はしないでくれと  反対の活動をしています。
 よろしくです。
by えんや (2016-08-27 20:29) 

momotaro

kazg さま
> 簡単にはコメント書けななくて・・・ゆっくり考えることにします。
難しい問題ですよね。Enrique さんのご意見もあり、私も考え直すことにしました。また、お知恵をお貸しください。
by momotaro (2016-08-28 07:01) 

momotaro

えんや様
> 宮城県の女川原発の30キロ圏で女川原発の再稼働はしないでくれと反対の活動をしています。
それは大変ですね、また切実ですね。
日本は災害列島ですから、原発を作る場所はありません。事故がなくても、廃棄物が処分できないのですから、絶対反対です!
by momotaro (2016-08-28 07:04) 

さきしなのてるりん

幣原首相が9条2項の提言をしたということが文書によって決定的になり、「憲法はアメリカの押しつけ」が通用しなくなりました。戦後日本の国民のほとんどの気持ちを幣原首相は肌で感じていたのだと思います。フィリピンモデルは、それとは少し違った感覚です。理想と言われようと私は絶対的戦争放棄を追求したい。専守防衛は当たり前なのだから最低限の防衛体制は必要という考えは今の世界情勢の中でどうしても払拭できない国民の思いは当然でしょうが、であれば戦争しないで済む国際社会作るために9条持つ日本が果たす役割を本気ではたす仕事をしなければならない。それをしない段階で武器を持つことには不安以外のなにも持てない。それは野党共闘の共通政策「安倍政権下における憲法改定は許さない」を妨げるものではないけれど、個人としての強い要求です。
by さきしなのてるりん (2016-09-02 13:45) 

momotaro

さきしなのてるりん さま
> 幣原首相が9条2項の提言をしたということが文書によって決定的になり、「憲法はアメリカの押しつけ」が通用しなくなりました。
矢部氏の指摘とは異なりますが、いずれにしても押しつけでないことは明らかでしょう。
> 戦争しないで済む国際社会作るために9条持つ日本が果たす役割を本気ではたす仕事をしなければならない。それをしない段階で武器を持つことには不安以外のなにも持てない。
まったく平和憲法を理解せず、その趣旨に沿った外交をしていませんからね、おっしゃるとおりです。
by momotaro (2016-09-02 16:48) 

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