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『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』を読んで―その23 [『日本はなぜ、「基地」と「原発」を・・・』]

   《 PART4 安保村の謎②-国連憲章と第2次大戦後の世界》(5)

 本日は225ページからです。安保村の謎②の終わりのあたりです。まとめるのが一番難しいところに差しかかったような気がします。全文引用してしまった方がよほど早いのですが、それではお役が果たせませんので、頑張ります。

続・「戦後史の謎」の正体-国連憲章第53条と日米安保条約がもつ二面性

〈 国連憲章の敵国条項である107条と53条1項後半をあわせ読むと、そこに書かれた、国連安保理の許可がなくても敵国を攻撃できる「(略)地域的取り決め」とは、実は日米安保条約のことではないかという仮説が浮かび上がる。
 その根拠としてつぎの経緯が挙げられる。
 日米間の安全保障条約はもともとはフィリピンやオーストラリア・ニュージーランドなどを加えた多国間の地域的安全保障協定として構想されていた。結局、他の加盟予定国が日本に対し不信感が強く、日本と同盟関係になることを拒否したため実現はしなかった。
 結果として、アメリカはフィリピンとは米比相互防衛条約を、オーストラリア・ニュージーランドとは太平洋安全保障条約を、日本とは(旧)日米安保条約を結ぶことになったが、その3つともが当初の構想だった「日本の侵略政策の再現に備える安全保障協定」としての機能を引き継いだと考えることができる。
 もし日本が在日米軍や米軍基地の存在を脅かすような行動に出た場合、米軍はもちろん、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランドの軍隊が、国連安保理の許可なく、共同で日本を攻撃できるようになっていた。また法的権利としては、現在でもそうなっている。
 もともと日米安保条約とは、「日本という国」の平和と安全のためではなく、「日本という地域」の平和と安全のために結ばれたものであり、その地域内で最も「攻撃的な脅威」となる可能性が高いと想定されていたのは、なんと、当の日本国だったということである。〉

キッシンジャーと周恩来の在日米軍基地をめぐる会話

〈 こうした歴史を持ち出すまでもなく、在日米軍に二面性があることは、これまで何度もアメリカ側の責任者から証言されてきた。
 かつて大統領補佐官だったヘンリーキッシンジャーは、中国の周恩来首相から「日本になぜ米軍を駐留させるのか」という根本的な疑問を投げかけられた際、
「もし我々が日本から撤退すると、十分なプルトニウムを保有している日本は簡単に核兵器を作ることができる。我々はそれに反対なのだ。」と答えている。また、
「われわれは日本の軍備を日本の主要4島防衛の範囲に押しとどめることに最善をつくすつもりだ。しかし、もしそれに失敗すれば、他の国とともに日本の力の膨張を阻止するだろう」などとも述べている。これをいわゆる「ビンのふた論」という。
 ブルース・カミングスという米国の歴史学者は、第二次大戦後のアメリカの基本戦略について、アメリカの「封じ込め政策」は
「敵対する共産主義国・ソ連とその同盟国の封じ込めばかりでなく、敗戦国・ドイツと日本の封じ込めに向けられていた」と解説している。〉

なぜ日本全土で低空飛行訓練をしているのか

〈 日本はアメリカの「同盟国&属国」というよりも、より本質的には「同盟国&潜在的敵国」だった。
 オスプレイが沖縄へ配備されたときに、米軍は日本全国で低空飛行訓練を行っていることが有名になったが、そもそもなぜこれほど日本全土で演習する必要があるのか。〉

 明記していないが、著者の答の一つは「米軍は日本全土の精密調査を行っている」ということのようである。

原発を標的にした低空飛行訓練

〈 1988年6月に米軍機の一機が、四国の伊方原発のすぐ横に墜落したことがあった。なぜこんな場所を低空飛行していたのか。低空飛行訓練は、基本的に軍事攻撃の訓練だから、演習には必ず標的を設定する必要がある。原発を標的にしていたとしか考えられない。
 米軍機は、日本全土で低空飛行訓練をすることで、いつでも日本中の原発を爆撃できるオプションを持っている。これは疑いのない事実なのだ。〉

160年前に沖縄を測量していた米軍

〈 160年前にペリーが浦賀にやってきたが、その前に沖縄に上陸し、奥地まで行って測量をし、水源や水質の調査もしていた。その時の調査記録が第二次大戦の沖縄上陸戦で使われたことがわかっている。嘉手納には非常に良質で豊かな水源があることを彼らは調査によって知っていた。
 軍隊は、軍用機や武器が油でドロドロになるから常に大量の水で洗浄しなければならない。米軍は70年前に嘉手納に上陸・占拠して、いまなお、そこを最大の軍事拠点としている。
 こうした事実を知ると、日本全国で低空飛行訓練をしている米軍は、いつでも瞬時に日本中の原発を爆撃し、日本全体を壊滅させられるオプションを持っているということがわかる。これでは心理的に対等な交渉などできるはずがない。
 だから、「まず銃をしまってくれ」つまり米軍は撤退してくれと言う必要がある。そうでなければ正常な外交交渉など、絶対にできるはずがない。〉

********************************************
 以上を総括しますと、日米安保条約は、日本の安全を保障するものと思いがちですが、アメリカから見ると、米軍を日本に駐留させて、共産主義国の拡大を阻止するとともに、日本が再び軍事的脅威になることを抑え込むためのものです。米軍は、日本全土を低空飛行して、軍事訓練と地下資源などの調査をしているので、原発を攻撃することも可能ですし、どこにどう米軍を進駐させれば良いかなども、ほとんど知りつくしていると思われます。
「これでは対等の外交交渉などできるはずもないので、まずは米軍に撤退してもらわなければならない」と著者は書いています。

 日本人の多くは、日本の平和と安全のために米軍の駐留が必要で、日米安保条約を結び、地位協定で厚くもてなしていると思っていますが、実際の国際法の文面や現実の日米関係を見ていると、著者の推測を含む解釈のほうが間違いなく真実に近いと思われます。
 核兵器の問題も、日本はアメリカの核の傘に入っていることが周辺国への抑止力になっていると思いがちですが、そういう面があると同時に、日本中の核施設は完全にアメリカの監視下に置かれ、日本が独自に(アメリカの許可なく)核兵器への転用を進めるようなことがあれば、核施設は米軍の攻撃対象になり、核兵器を使われたのと同じ状況になるということでもあります。
 完全に両刃の剣です。
 こんな状況下でも原子力発電を始め、大事故があった後にも当たり前のように再稼働させようとしている日本国の国策とは何なのでしょうか。処分法もない核廃棄物を出し続け、一度事故があればその補償に莫大な費用がかかる発電をコストが安いからとやり続ける・・・?
 いつかアメリカの国力が衰えてきたときに、一挙に核兵器を大量に製造し、核大国に躍り出るつもりでもあるのでしょうか。自分の国のことでも、いろいろ勘繰りたくなります。

 政府の思惑は分かりませんが、米軍に完全に牛耳られている国に住んでいるのは、精神衛生上好ましくありません。なぜって、選挙権があって国会議員を選んでも、国会運営がいい加減なのですから。
 憲法があっても、違憲と言われようが何と言われようが、逸脱したことを政府が平気でやってしまうのですから。
 裁判所があるじゃないかと言っても、「高度な政治判断は司法には向かない」とか何とか言われてしまうのですから。
 著者は「まずは米軍に撤退してくれと言う必要がある」と書いていますが、戦争前から準備して、70年もかけて仕上げてきた米軍の日本駐留を、「どうもありがとうございました。これで結構ですから、どうぞお引き取り下さい」って言えば引き取ってくれるのでしょうか。そうは簡単には行きそうもありません。
 著者自身も、「まずはアメリカと国際社会に向かって言いだす必要がある。そうしないと、ことは絶対に進まない」と言いたいのです。

 さて、日本国民としては、まずはお引き取りいただく宣言をして、その間に、米軍に代わる軍事力の備えをするのではなく、軍事力に頼らない平和外交宣言をする必要があります。今のアベ政権のような国家主義的独裁主義で周辺諸国に緊張を与えるような外交政策ではなく、周辺諸国との平和友好条約・不可侵条約の締結を柱とする、信頼される国づくりをやり遂げなければなりません。
 国民からも、諸外国からも、真に安心できる民主国家を創って、米軍にお引き取り願い、敵国条項からも外してもらうという、そんな方法しか、もはやないでしょう。

 私見が多くなりました。(本書の勉強はまだ続きます)

 余談になりますが、ジパング党事務局としては、これを、外交政策の基本(のたたき台)としたいと思います。奮ってご意見をお寄せ下さい。

 お読みいただき大変ありがとうございました。以下はおまけの写真です。

 10月30日、大船の植物園にて。秋が一番花がきれいに咲くような、そんな感じがします。
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IMG_1065 植物園.jpg



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コメント 16

SUN FIRST

なんとも複雑ですねえ!

260万人~300万を越すともいわれる犠牲者の死は何だったのでしょう?
しかし、いまや、地球時代になって・・・、「第三次大戦」は、「地球環境と人類の生存」になってますな。
人類以外の種の「種を保つ自然のための弱肉強食」ならまだよいのでしょうが・・・欲の強すぎる人間は種としての自滅の道をまっしぐらですかねー。
「人間の欲」の行き着く先は「自滅する」しかないのでしょうか?
そっと、孫を抱いちゃいますね・・・。
ほんの一部?の欲の強いものに翻弄されながら生きる人間社会の構図はこれから先もずーっと変わらないのでしょうねえー。
まいにちの心中穏やかでいられぬニュースを見ているだけでも息が詰まっておりますが、今回のPART4(5)は厳しすぎましたーーー。


by SUN FIRST (2015-11-11 03:43) 

momotaro

SUN FIRST 様
> 260万人~300万を越すともいわれる犠牲者の死は何だったのでしょう?
そうなんですよ、あちらは大いなる犠牲を払って手に入れたのだから…と、日本を手放さない。
こちらはただ犠牲を払っただけですからね、そのうえ牛耳られ続けている。
もっとも、前より大分いい国にしてもらいましたけどね、でもそれが見かけだけでは困りますからね
日本も払った犠牲に見合うだけの大きな物は手に入れないといけません。
単純なんですよ、「二度と戦争はしない」この覚悟しかありませんよ。
それもしなかったら、ご先祖様に本当に申し訳ない。
だからアベ政治は許せないのです!!!
絶対に許さない (^O^)/
コメントありがとうございました
by momotaro (2015-11-11 06:18) 

にじ

だいたい想像はつくことでしたが、改めてこうして読みますと愕然としました。
ほんとうにいてもたってもいられないです。それにしてもジパング党ってなんですか。
選挙モードの熊谷で色々考えちゃうこの頃。
ですが、わたしも介助・介護・息子のいる大宮の家事・雑用・映画鑑賞やらボランティアやらでまったく貧乏暇なし。そんな中でももたろうさんのこと心配してました。ご無事で、そして充実した日々何よりでした。
エールを送ります。
by にじ (2015-11-11 10:57) 

lamer

国連の一員なのですから国連で米軍の不法駐留を正す事が出来る筈です。
ただ、現政権は(自民党は)米軍の駐留を良しとしている。
それは、アメリカに追従していた方が特だと考えているからだと思う。
しかし、それでは日本は独立国と世界の国々から認められませんね。
米軍にお引き取りいただく方策が必要です。
by lamer (2015-11-11 11:47) 

さきしなのてるりん

日米安保条約の10条は日米のいずれか一方の通告によって1年以内に条約を解消できるとしていますので、条約を解消する政府ができればいいわけです。しかし、現在この政策を掲げているのは共産党だけです。社民党の前身社会党が80年代に安保廃棄を捨ててからほとんど政策として語られなくなりました。国民レベルではこうして語られるのに、政党になると消えてしまうのですね。ちなみに共産党は軍事同盟である日米安保条約を廃棄した後、アメリカとは友好平和条約を結ぶことでリンカァンを生んだアメリカの民主主義に敬意を表しながら対等平等の外交を進めるとしています。
by さきしなのてるりん (2015-11-11 12:06) 

トックリヤシ

如何に惨めな国へ突き進もうとしているのか、
分かろうともしない・・・?いや分かっていないのが
この国の政治家達なのですね、許せませんナ~。。。

by トックリヤシ (2015-11-11 13:31) 

momotaro

にじ様
真相を知ると居ても立ってもいられない心境になりますよね。多くの人が真実を知って、正しい出口に向かって共に行動したいですよね。
ジパング党?よいことを尋ねてくださいました。実は先日新党を立ち上げたんですよ。3つ前のブログをご覧いただくとその呼びかけが載っています。
党員や支持者、応援団など募集しておりますので、是非ご参加ください。
なかなか充実した日々が送れなくて困っているのですが、お互いに、焦らずできることを「粛々と」?「淡々と」?協力し合って、やることにしましょう (^_−)−☆
by momotaro (2015-11-11 16:31) 

momotaro

lamer 様
米軍の駐留ですが、国連憲章の敵国条項が微妙に絡んできて、必ずしも違法・不法とも言えないようです。
政府が現状を率先して受け入れているように見えるのも事実ですよね。
国の統治権も制限され、国民にとっては憲法が及ばない権力が存在するというのも、おかしな話ですよね!
いつかどうにかしないと、おかしな状況が延々続いてしまいますよね。
コメントありがとうございました
by momotaro (2015-11-11 16:37) 

momotaro

さきしなのてるりん様
ご指摘ありがとうございます。
共産党を異端視する人、恐れる人が多いのですが、まともな提案をしていることが多いと思っています。
政権側の悪宣伝に乗っちゃっているのではないでしょうか。
今の自由民主党より、よほど自由と民主主義の大切さを知っているのではないでしょうか。
by momotaro (2015-11-11 17:08) 

momotaro

トックリヤシ様
> 惨めな国へ突き進もうとしている…
まったくです。つまらないところで意地を張って過ちを詫びない。そのくせ、負け犬根性丸出しで、強いものには媚びへつらう。
人としての毅然とした信念が感じられない。それでも支持率50%だっていうのだから・・・しばし途方に暮れますね[右斜め下]?
by momotaro (2015-11-11 17:19) 

majyo

うわーっ一番難しいところ、すっかり忘れています
忘れたと言うより、理解できなかったのだと思います
日米安保とは、あの大戦で一番精神的にも脅威になった日本への
封じ込めでしたか。

吉田総理は、池田勇人にこの安保条約には臨席するな!
傷がつくと言ったそうです。今日移動中にスマホで聞きました。
その時にビンの蓋と言うのも初めて聞きました。

あの本で驚いたのは 写真付きで書かれた
原発の近くへの米軍ヘリ墜落の事です。
これは本当に由々しきことで、なぜ政府は問題にしなかったのでしょう
そして書かれているように
基地が日本全国にあるように、アメリカは日本に対して
幾つものオプションがあり
決して、日本を守っていると言うのではありませんね。
思いやり予算までつけ、脅威にさらされている・・・
これが日米安保の本質です。
言いなりになって、勲章まで与えるのは?
今後の自分たちの栄達でしょうか

書かれていることは全てと言うほど同じ思いです
難しい事は承知していますが
基地がある間は、日本は独立国とは言えず 対等など夢のまた夢です
新しいタイプの政治家を輩出し
新生日本を作らねばなりませんね。

by majyo (2015-11-11 17:46) 

momotaro

majyo 様
悩みは多いですが、
抜け出す道は「国民に事実をよく知ってもらって、新しいタイプの政治家を輩出し、新生日本を作らねばなりませんね」
これですね (^_−)−☆
by momotaro (2015-11-11 20:42) 

tempest17

こう見て来ますと、
国連も民主的な組織ではありませんね。
<敵国条項>などと言うのを盛り込んだこと、
不可解です。
by tempest17 (2015-11-11 21:56) 

ファルコ84

私もこの本を読みましたが
なかなか奥が深く
色々な事実に目が覚めました。
武力により
平和は求められません
武力には武力で帰ってくるからです。
そして、この武力で
過去から現代まで
どれだけ多くの住民が犠牲になっている事か
火を見るより明らかです。
人類の知恵を
武力に頼らない平和に
繋げられないものかと
いつも思っています。
by ファルコ84 (2015-11-11 23:08) 

momotaro

tempest17 様
国連と訳していますが連合国ですから、いろいろな歪みがありますよね。
拠出金だけ増やして大きな顔をしようとするのではなく、敵国条項の削除など、民主化のための発言もしながら貢献すべきではなかったかと思います。
今は金だけではなく、血も出そうとしているのですが、国際社会は論理が先なんですよね。
既成事実を重ねて原則を変えようというのは、世界では通用しませんから。
コメントに感謝します。
by momotaro (2015-11-12 08:07) 

momotaro

ファルコ84様
コメントありがとうございます。
おっしゃるとおりです。
貴ブログにもこのような思いが溢れており、参考にさせていただいております。
これからも、共に頑張って発信して参りましょう (^O^)/
by momotaro (2015-11-12 08:16) 

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