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『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』を読んで その21 [『日本はなぜ、「基地」と「原発」を・・・』]

   《 PART4 安保村の謎②-国連憲章と第2次大戦後の世界》(3)

 シリーズ21回目です。コンパクトにしたいと思いながら、長ーい話になってしまっています。この長いお話、好き好んでやっているかというと、行きがかり上、仕方ないか―との思いも、正直あります。しかし、これは自分にとっての勉強でもありますので、黙々と続けることにします。
 テキストは『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』今日は210ページからです。法的な話なので、少し込み入っていますが、沖縄問題の根底に関わる話なので、頑張ります、頑張りましょう。

   《敵国条項 enemy state clause

〈現在、国連の安全保障理事会常任理事国は、米・英・中・ロにフランスを加えた5カ国となっていて、拒否権という絶大な特権を持っている。他の加盟国とは明らかな格差があるが、もう1つ、大きな差別がある。敗戦国を対象とする敵国条項だ。戦後日本は国際法上もっとも下位の位置から再スタートを切ることになったが、すぐに冷戦が勃発したため、私たち日本人は、西側自由主義陣営は自分たちの味方で、中国や旧ソ連などの共産圏は敵側だと思ってきた。
 現在の中国はアメリカとともに第二次大戦を戦った中華民国とは別の国で、朝鮮戦争をアメリカと戦った正真正銘の敵国なのだが、冷戦の後に残された国連の枠組みを見てみると、本質的な対立は、戦後一貫して、戦勝国である連合国側と敗戦国の間に存在したということができる。国際社会には明確な差別構造が法的に存在し続けている。
 敵国とは日本、ドイツ、イタリア、ブルガリアなど7カ国を意味すると言われているが、日本とドイツ以外の5カ国はすべて大戦中に枢軸国側から離脱し、日本とドイツに対して宣戦布告を行った国々だ。したがって真の敵国条項の対象国は日本とドイツの2カ国だけである。〉

   《国連憲章第53条

〈国連憲章は戦後の国際社会の基礎となる取り決めで、その根拠は次の条文にある。
「第103条:国際連合加盟国において、この憲章にもとづく義務と、他のいずれかの国際協定にもとづく義務とが抵触するときは、この憲章にもとづく義務が優先する」
 その国連憲章の大きな特色は「平和的手段による国際紛争の解決」で、その理念を表す条文は次のようになっている。
「第2条 3項:すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって(略)解決しなければならない
4項:すべての加盟国は、武力による威嚇又は武力の行使を(略)慎まなければならない」
 第二次大戦後の世界における軍事力の行使は、自衛の場合を除いて、あくまで安保理の許可があったときだけ、世界各地にある安全保障機構を通じて行使できるということになっている。
「第53条 1項(前半):安全保障理事会は、その権威のもとにおける強制行動のために、適当な場合には、前期の地域的取り決めまたは地域的機関を利用する。ただし、いかなる強制行動も、安全保障理事会の許可がなければ、地域的取り決めにもとづいて、または地域的機関によってとられてはならない」となっている。
 しかし同時に、同条同項後半は、敵国についてはその例外としている。
「第53条 1項(後半):もっとも、(略)敵国のいずれかに対する措置で、第107条にしたがって規定されるもの、またはその敵国における侵略政策の再現に備える地域的取り決め〔地域的安全保障協定〕において規定されるものは、関係政府の要請にもとづいてこの機構〔国連〕がその敵国による新たな侵略を防止する責任を負うときまで例外とする」
「敵国条項の主な目的は、ドイツと日本の永久的かつ有効な非武装化であり、それら二カ国の支配である」と議事録に書かれている。〉

   《戦後70年たっても削除されない敵国条項

〈現在でもこの敵国条項はまだ削除されていない。
 1995年第50回国連総会で、敵国条項をすでに死文化したものと認め、憲章から削除するという決議案が圧倒的多数で採択されたものの、それから20年たった今も、敵国条項の削除は実現していない。障害になっているのは「すべての安保理常任理事国による批准」である。〉

   《「戦後史の謎」の正体-国連憲章第107条

〈国連憲章・第107条も、第53条と同じく敵国条項である。国連憲章のすべての条文は、戦勝国が敵国に対しておこなった戦後処理の問題については、いっさい適用されないということが書かれている。
「第107条:この憲章のいかなる規定も、第二次世界大戦中にこの憲章の署名国の敵であった国に関する行動で、その行動について責任を有する政府がこの戦争の結果としてとり、または許可したものを無効にし、または排除するものではない」
 これこそが、パート1で見た「沖縄の謎」の正体であり、また首都圏上空に広がる巨大な米軍の管理空域の正体でもある。〉

 このあたりを勉強すると、国際社会にかかわるアメリカの能動的な姿勢が、19世紀後半からかかわりだした極東の島国とは、雲泥の差があることが分かる。まさに、大人と子ども、幼児ほど違う。
 ヨーロッパの戦乱の歴史は長く、アメリカは紛れもなく、そこの文化を受け継いで誕生した大国であった。
 アメリカは、まだ日米戦争開戦前の1941年8月の大西洋憲章で、自分たちが戦争に勝ったらこうすると、戦後世界のガイドラインを決め、公明正大なルールを打ち出して、新たなる勢力の台頭に釘を刺しつつ、自分たちの有利な地位を徹底的に築き守っていく意志を実現させるため、その行為が違法とならないように巧妙に法文作成をしていたのだ。
 真珠湾に奇襲攻撃をかけて国を挙げて戦った日本が、いいように手玉にとられたことがよくわかる。
 これらの巧妙な手立てはまだまだ続くが、節が長いとお互いに大変なので、今宵はこれまでとします。

 おまけの写真は、埼玉農林公園、一昨日、しぶしぶ(イエイエ喜んで)子守りに行ってきました。深谷―嵐山線、旧川本町にあります。
IMG_0938.jpg

 かなり広い芝生の広場があります。
IMG_0917 農林公園.jpg

 早、(たぶん)寒桜がいくつか咲いていました。
IMG_0934 寒桜.jpg

 うどんの店があって、手打ちうどんを食べてきました。なかなか美味しかったですよ、先日の友人手作りほどではなかったけど。ここは、駐車も入場も無料。土日はミニSLの運転もあり。

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SUN FIRST

〈〉のある段落と無い段落があって著者の記述と、momotaroさんの記述とが判りにくくなっていました。
 しかしながら、今回を読ませていただき、日本会議のメンバー多数の閣僚率いる党が、なにを?ああしてぶざまな国会運営をしてまで、アメリカさんのために「???」でしたね。
 敵国条項を承知の上ですかね?
 どうなっているのでしょう?
私事、混乱してますが、次回に期待することにします。


by SUN FIRST (2015-10-24 04:51) 

ファルコ84

敵国条項は、
戦争の歴史を消さないため
永遠に消えないのでしょう!
中国は突然国連で、
日本はプルトニウムを大量に保有
1350発の核弾頭の製造に十分な量だ
と発言した。
安倍政権の安保法案に
関連した発言なのでしょうか。
by ファルコ84 (2015-10-24 10:16) 

momotaro

SUN FIRST 様
ご指摘ありがとうございます。修正しました。
> 日本会議のメンバー多数の閣僚率いる党が、なにを?ああしてぶざまな国会運営をしてまで、アメリカさんのために「???」でしたね。
首都圏上空を牛耳られていると、もう従うしかないのですかねー
しかしそれは間違った出口ですよね。そんなことをしていたら永遠に属国です。
国民に状況をつまびらかにして、世論を背景に、事態を改善していく努力をしないといけませんよね。またいけなかったのではないでしょうか。
by momotaro (2015-10-24 11:44) 

momotaro

ファルコ84様
軍備を拡充して抑止力にしようとすると、結局双方が疑心暗鬼に陥り、ますますの軍拡につながり、事を大きくしてしまいますよね。
隣国同志、刺激し合わないように、友好関係を深めるしか、現実的な方策はないと思いますがね、特に日本は国土が狭く、過密した文明社会なのですから。
by momotaro (2015-10-24 11:53) 

トックリヤシ

敵国条例を認識しながら
一人相撲を取っている愚かな国ということでしょうか。。。。
by トックリヤシ (2015-10-24 13:37) 

momotaro

トックリヤシ様
自国の憲法すら解釈でどうにでもなると思っちゃう人たちですから、敵国条項なんか、目にも入らないんですかねー
文書には文書できちんと対応するというアタマが働かない?
by momotaro (2015-10-24 19:02) 

majyo

浮かれている政府に言いたいです
こちらに書かれているように日本はまだ敵国なのですと
しかし、ドイツは粛々とその負債を片づけているように思いますが
日本は?
南京大虐殺は何も無かったと、ユネスコに文句を言っています。

すっかり忘れている本の内容ですが
改めて、これはしっかり考えなければならないと思っています。
これは、最後にはまた本になりうる内容ですね(^_-)-☆

by majyo (2015-10-24 19:57) 

gonntan

倒錯した願いと現実の狭間で、実益がすべてを支配しようとしている
っていうようなことも書かれてましたね。
ゴールはどこなのか?どのような形の国にしたいのか、です。
自民党の改憲草案なんか時代遅れのイスラム国と同じ土俵の
酷いものです。
by gonntan (2015-10-24 22:35) 

momotaro


majyo 様
> 浮かれている政府に言いたいです
まったくですねぇ。
「敵国」と呼ばれながら拠出金は大量に出し、歴史認識はできないままユネスコと喧嘩し…
やはり、日本政府は国連を連合国とは別物と考えてきてしまったようです。自分たちが訳し分けてきただけなのに、いつの間にか別物と思ってしまった。原発の安全神話と似ているようです。
事態をまともに見られず、虚構を作り、それが自分たちが作った虚構だということも忘れてしまう。
官房長官の弁を聴いていると、すべて、その取り繕いのように聞こえます。
現実をしっかりとらえているドイツと好対照です。
> これは最後にはまた本になりうる…
ご迷惑をおかけするのでそんなつもりはありませんが、著者の矢部さんや出版元がどう評価するか、一度伺ってみたいし、伺わなければならないと思っています。解説本として認めてくれるのか、著作権侵害になってしまうのか、気にはなっています。
by momotaro (2015-10-25 04:32) 

momotaro

gonntan 様
> 倒錯した願いと現実の狭間で、実益がすべてを支配しようとしている
まさにそれですね。

> ゴールはどこなのか?どのような形の国にしたいのか
そこをしっかり議論し意思統一をしたいですよね。

> 自民党の改憲草案なんか時代遅れのイスラム国と同じ土俵の酷いものです。
与党がそんなですから本当に情けないですよね
by momotaro (2015-10-25 04:34) 

kazg

繰り返し読ませていただき、コメントすべき意見がまとまらないまま、保留しております。「戦後処理」を終わらせることなく、新しい戦争に備えるでたらめさは、「敵国条項」を放置したまま忠犬「ポチ」を演じる無神経さ(卑屈さ?)とつながっているのですね。
シャボン玉、お見事です。

by kazg (2015-10-25 08:59) 

momotaro

kazg 様
日本の政治は、国民、国会に対しては権威主義的で強引なくせに、実は屈折していて卑屈で・・・、一体だれが悪いんですかねー?
戦前は陸海軍のエリート、戦後は東大出のエリート官僚なんですかねー・・・?
ナードサークのこと、よくわかりました。お尋ねしたのが恥ずかしいことではなかったのでホッとするとともに、kazg さんの心の大きさも、また伝わってきました。
シャボン玉、やったー (^_-)-☆
by momotaro (2015-10-25 11:19) 

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