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『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』を読んで―20 [『日本はなぜ、「基地」と「原発」を・・・』]

   《 PART4 安保村の謎②-国連憲章と第2次大戦後の世界》(2)

   《右手でソ連、左手で中国と手を握った英米同盟
〈第二次大戦の歴史を見ていくと、イギリス、アメリカ両国の構想力と組織づくりのうまさに感心させられる。大西洋憲章からわずか4ヶ月で26カ国の巨大な国家連合を成立させ、加盟国は大戦末期までに47カ国に増え、戦後は国際機関に衣替えし、現在は200カ国近い加盟国を持つ国際連合となっているからだ。
 しかしその本質は「英米同盟+ソ連」または「英米同盟+中国」という形で、英米がいわば右手でソ連、左手で中国と手を握って第二次大戦を戦っていった。
 この事実は、三国同盟が軍事的になんの連携プレーもできないまま終わったことを考えると、政治的スキルにおいて日本とアメリカ・イギリスは、まさに大人と子どもほどの違いがあったのだ。〉

国連憲章の原型―ダンバートン・オークス提案
〈戦争が終わり大西洋憲章をもとにつくられた国連憲章が発効して「戦後世界」が幕を開けることになる。しかしその前にこのふたつの憲章の間に位置する国連憲章の原案(ダンバートン・オークス提案)について説明する。
 なぜこれが重要かというと日本国憲法草案、とくにその戦力放棄条項はこの原案に書かれていた国連の基本理念を見たほうが、その本質が理解しやすいからだ。〉

原案にあった理想主義的な「世界政府構想」が、日本国憲法九条二項を生んだ
〈戦争とはこの世の地獄であり、なんとかして世界から戦争なくしたいと考えるのは人間の本能だ。
 しかし具体的な方法となると立場が分かれる。理想主義的に世界政府をつくってそのもとであらゆる国が戦力放棄をするという考え方がある。一方、人間の悪を内包しないユートピア思想は、最悪の地獄を生むだけで、現実の平和は大国間の勢力均衡によってもたらされるもの以外にありえないという考え方もある。
 現在の国連は、前者の理想主義的な枠組みの中に、安全保障理事会常任理事国という5大国による疑似的バランス・オブ・パワー機能を組み込んだなかなかよく考えられた世界的安全保障システムだと思う。
 しかし国連憲章の原案は現在の国連憲章より、もっと理想主義的な色彩が強いものだった。「一般の加盟国に、独自に戦争をする権利を認めていなかった」
 国連安全保障理事会だけが「世界政府」として軍事力の使用権を独占し、他の国はそれを持たないという、国連憲章の原案にあった理想主義的構想が、のちに日本国憲法9条2項が執筆される大きな前提となっている。世界政府構想の核心である国連軍構想が、GHQが日本国憲法草案を書いた1946年2月の時点ではまだ生きていたということが重要だ。〉

人類究極の夢「憲法九条二項」とマッカーサーの暴走
〈日本国憲法をつくるにあたってマッカーサーが部下に示した三原則(マッカーサー・ノート)には九条のもとになった「戦争と戦力の放棄」について次のように書かれている。
「国権の発動たる戦争は、廃止する。
 日本は、紛争解決のための手段としての戦争、さらに自己の安全を保持するための手段としての戦争をも、放棄する。
 日本はその防衛と保護を、いまや世界を動かしつつある崇高な理想にゆだねる。
 日本が陸海空軍をもつことは、今後も許可されることはなく、交戦権が日本軍に与えられることもない」

 この「いまや世界を動かしつつある崇高な理想」が、国連の世界政府構想つまり正規の国連軍構想を意味していたことは明らかだ。
 しかし、このGHQ自身による憲法草案の執筆は、本国国務省は関知せず、マッカーサーとその側近たちによる完全な「暴走」だった。
 その後、冷戦の始まりを受けて、5大国による国連軍創設のための会議は、なんの成果も得られないまま1948年に打ち切られることになった。同年行われた大統領予備選で、マッカーサーもまた敗北を喫してしまう。
 その結果、日本国憲法九条二項は現実の世界における基盤を完全に喪失してしまうことになった。つまり、現実世界で機能する可能性をもった条文だったものがユートピア思想に変わってしまった。その結果として起きている現実は、米軍による日本全土への永久駐留であり、民主主義国家アメリカの基地帝国化なのだ。〉

 本書は全編重要なことが書かれていると思うが、なかでもこのあたりの解説は、歴史の概要を理解するうえで、かなり重要と思われる。
 世界経済が行き詰まるなかで、植民地や資源を有する先進国のつくる世界秩序に、軍事・経済・技術等の力をつけた新興国が、養った力を行使して暴力的に挑む。秩序側は連合戦線を組み、この暴力を、自分たちの正義に対する野蛮な行為として力を結集し暴力的に立ち向かう。結果、幾多の尊い人命が失われる。

 軍事力を行使する指揮官は、戦争に決着をつけるまでは持てる軍事力をフルに発揮して戦を遂行するだろうが、決着がついてくると、「こんな大戦はこれを最後にしなければ…、それにはいかにすれば…」との思いを巡らせながら敵を降伏に追い込んでくるだろう。

「戦勝国(連合国)が一丸となって、軍事力を出し合い、連合国軍(国連軍)を恒常的に維持して、敗戦国はもちろん各国に軍事力を備える必要をなくしていけば、国家間の戦争を終わらせることができるのではないか」と考えたとしても不思議ではないように思う。

 しかし、ホットに戦っているうちは、連合国としてまとまっていて、平和を希求していても、決着が見えてくると、それぞれの国の国益の違いが明らかになってくる。アメリカにしてみると、体制の違うソ連と中華人民共和国の存在が、終戦後の課題として浮かび上がってくる。

 こうして、連合国軍(国連軍)創設・世界政府樹立の構想は現実性を失い、消滅していく。連合国(国連)としては、連合国軍(国連軍)がない以上、国家間の戦争を禁ずる拠り所がないので、その権利が認めらたまま残るということになったのだろう。

 戦後、新たな段階を迎えたわけだが、その秩序づくりについては、例の大西洋憲章、連合国共同宣言にすでに謳ってあるので、それを実践、またそれに拘束されることになる。領土については不拡大、民族については自決権を尊重する、などとしていた。しかし、日本の地理的条件が、東アジアを見たときに余りにも重要なので、アメリカは、本書が次に説明する複雑な方法を駆使して(国際法の抜け道をくぐりぬけて)、巨大な基地を日本に展開したまま維持し活用するようになる。

 憲法九条については、当時の現実的な構想が破綻したとは言え、前文の「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」の表現や、「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において」の表現、また、九条の「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」の表現に見られる平和や公平を求める人間の向上心・理性は、漠然とではあるが、確かに、人類世界に存在するものである。国連軍という具体的な力の存在がなくても、自衛に限定する装備さえ保持していれば、このような戦争放棄を憲法で宣言する国があっても必ずしも非現実的とも無謀とも言えないのではないかと思う。

 自衛隊の存在を憲法に規定すべきだとか、日本人の手で、本当の国民主権の憲法を書き直すべきだとの意見は、そのとおりと思う。早く、良いところを残して、不適切なところを直し、必要なことを書き加えて、もっと良い憲法をつくりたいものである。
 
 ところが、現実のアベ政治では、憲法違反の「安保」法制が成立して、自衛隊が必ずしも自衛に限定する組織ではなくなってしまった。この解釈の変更は極めて大きく、憲法の趣旨を根底から覆す背信的暴挙であると言わざるを得ない。


 以下はおまけの写真です。粗末でどうもすいません!
IMG_0653 (3).jpg

 この写真は前回掲載し「この地は幸い水害も免れ、豊作のように見受けられます」と書きましたが、農業も営む『友よ、戦争をしない世界を創ろう!』を出版してくれたS氏にお聞きしたところ、今年は花が咲くころ(お盆のころ)雨が多かったことと、その後も日照不足で、刈り入れが十日ぐらい遅れているとのこと。出来も収穫してみないとわからないとのことです。

 先日雑草、雑木を退治していたところ、枝に大きく太った青虫を発見。もうじきサナギになって蝶が生まれるかもしれないので、そっと戻しておきました。孫が目下「はらぺこあおむし」に夢中なので。
IMG_0676 青虫.jpg


 ランタナです。先日kazg さんに「七変化とも呼ばれる」、横 濱男さんに「色々な色がありますよ」と教えていただいたので、他の色を探しておりました。そしてとうとう発見しました。まだほかにもあるかもしれませんね。
IMG_0474 ランタナ.jpg


IMG_0718 ランタナ.jpg


IMG_0717 ランタナ.jpg


 睡蓮にイトトンボですが、糸が細くてよくわかりません。m(__)m
IMG_0720 (2) 水連.jpg


 ツマグロヒョウモンの♀ではないかと…
FullSizeRender ♀.jpg


 ご高覧に感謝いたします。
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BrerRabbit

着々と進む解説に感謝です。
ちなみにご報告を一件
先日図書館から連絡ありまして
「入ったでぇ~借りに来てやぁ~」
当然「遅いやんかぁ~」などと文句は言っておりません。
紳士的に借りに行ってまいりました。
17日には他の方へ引き継がれる予定です。



by BrerRabbit (2015-10-04 17:38) 

momotaro

紳士だなあ~、ありがとうございます m(__)m
図書館に種をまいてもらっちゃいました。
着々となかなかいかないのですが、ご声援を受けて、頑張ります!
by momotaro (2015-10-04 19:32) 

majyo

読んだ本なのに、理解することが難しいです。
昔、momotarouさんのはプリントしてマーカーしたようにしなければ・・・
しかし、これをまとめる事は至難だと思いますから
よくぞと感謝しています。

私も、憲法は残すべきもの、きちんと現実に即するもの
それを明記する事には賛成です。
あくまで、個別的自衛権に限る事が条件ですが・・・
人類の理想を、たやすく放棄しない。
それでこそ、日本の価値が生れます。
バングラデッシュでイスラム国にて日本人が射殺されました。
真偽はわかりませんが、米英有志連合という事らしい
もう、待った無しです


by majyo (2015-10-04 19:54) 

ファルコ84

安倍総理は
国民が反対した
安保法案を国の方針とし
積極的平和主義とやらを前面に
国連の常任理事国入りをたくらんでいる
もっとやることがあるはずなのに
この人の個人的な
独走は止まらない。
党内もだまったまま
なんとかせねば。

ランタナは、
色が多彩で綺麗ですね。
by ファルコ84 (2015-10-04 23:47) 

momotaro

majyo 様
「憲法9条を守れば平和だと言うのは間違いだ。憲法が国を守ってくれるわけではない」とアベ批判者を批判する人がいます。確かに平和主義を掲げていれば平和でいられるというものではないと思うので、災害や侵略者から国民を守る実行部隊は必要だと思います。
平和憲法プラス自衛隊(国民生活防衛隊)なら非現実的ということはありません。この基本方針で参りましょう!
バングラデシュでの事件は、アベ政治への反応でしょう。こういうことを通じてどんどん血生臭くなってくる。
早くアベ路線を修正修復しなければ・・・\(^o^)/
by momotaro (2015-10-05 00:50) 

momotaro

ファルコ84様
まったくなんとかせねば・・・ですね。
力を出し合ってぜひなんとかしちゃいましょう(^_^)v
by momotaro (2015-10-05 00:54) 

SUN FIRST

読み進み、いまここにきて、非常に複雑となって整理がつきません。
現政権が、「日本をとりもどす」とうたいながら、アメリカ一辺倒ともいえる安保法制強行突破の現実・・・。
momotaroさんの、
《自衛隊の存在を憲法に規定すべきだとか、日本人の手で、本当の国民主権の憲法を書き直すべきだとの意見は、そのとおりと思う。早く、良いところを残して、不適切なところを直し、必要なことを書き加えて、もっと良い憲法をつくりたいものである。》
との、「日本人による日本人主体の憲法改正」論・・・。
むかしむかし学習したのかしなかったのか?、江戸幕府末期の尊王攘夷だの薩英戦争だの長州戦争だのをへて開国~明治時代、大正、~昭和の大日本帝国構想~敗戦~現平成時代を迎えて、日本の国をかきまわしているのはいまだに長州山口県ですなあ?!。
いっぽうで会津福島県はいまだに長州山口県に戊辰戦争原発事故等々痛い目にあわされつづけて・・・。
これも複雑な心境、気の毒な気持ち、に、ならされざるを得ませんね。
日本の政治は明治以降長州山口県にもてあそばれて・・。
どうにもとまらない?
福島県の偉人古関裕而氏の遺した「とんがり帽子」や「栄冠は君に輝く」などなどなどの歌曲がきょう現在も折々に流されるのを聞くたびに・・・とくに戦争(災とは言わない)孤児と鐘の鳴る丘の「とんがり帽子」が流されたときに・・・人間社会のなんともいえぬ悲喜こもごも・・・複雑さから・・・悔しさまで・・・を感じさせらます。
若山牧水、「やまのあなたになおとおくさいわいすむとひとのいう」が、わがいつわらざる心境です。
8月30日、国会前デモにも参加しました。
その後も、安保法制反対デモ参加者に声援を送り続けています。
強い側持てる側にいつも弱い側持てない側が翻弄されて、しかし、心ある人が弱いもの持てざるものを勇気付け救い助けて、どこまで続くものでしょうか?
人類はいまもってなお戦争が環境汚染が止められない。
『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』を読んで―20 [日本考]を読み終えて・・・翻弄されるのみの自分としては複雑です。

民主党議員にカウンターのひげの佐藤正久氏は福島県人だっていうから、
ますます複雑になっちゃいますネエ???!!!




by SUN FIRST (2015-10-05 00:57) 

momotaro

SUN FIRST 様
> 現政権が、「日本をとりもどす」とうたいながら、アメリカ一辺倒ともいえる安保法制強行突破の現実・・・
A. 現政権の言っている「日本を取り戻す」は、「基地を置いて日本を実効支配している(というか、政権担当者がご意向に限りなく寄り添っている)アメリカから取り戻す」のではなく、「戦前の国家主義・全体主義の反省から、日本国憲法の国民主権・平和主義・基本的人権の尊重を重視してきた政治から、国家主義政治を取り戻す」という意味です。
ご存じのように戦前の反省が感じられない、「強い日本の復活」を目指すものです。それでいて頭にいただいているアメリカについては、「強い日本」の後ろ盾として、今の関係を強化しようとしているのです。
かつては天皇の権威を、今はアメリカの権勢を利用して、国民を従え、世界に自分の存在感を示そうとしているのです。

> momotaroさんの(省略)「日本人による日本人主体の憲法改正」論・・・
A. ・・・となっていますが、違和感があるのでしょう。実は私は前から憲法は変える必要があると思っていたのです。自民党の改憲勢力に対抗するため、いわゆる革新勢力は「護憲」を主張していましたが、もっとよく変える改正案を準備・検討する必要があったと思います。
自民の改正案よりもよっぽどいいものを早く提示すべきです(しなくては!)

> 日本の国をかきまわしているのはいまだに長州山口県ですなあ?!
> 日本の政治は明治以降長州山口県にもてあそばれて・・・
A. まったくですねー、なんか怪しい、・・・システム?
県民に問題があるわけではないでしょうから、円満解決したいものです。

> 古関裕而・・・、若山牧水・・・
A. 感傷的気分にもなりますが、また現実問題と距離のある話で頭も混乱しますが、茨城納豆、水戸納豆、もっと納豆、たまには甘納豆も少し食って、オクラもマクラも忘れずに、粘り強くいくしかありませんぜい。
(だれかの語りに似ているって? あれ、さっき行ってきたばかりなので)

by momotaro (2015-10-05 11:26) 

Enrique

しばらく前ですが週刊朝日で石原慎太郎と亀井静香の対談を読みました。どちらも改憲派ですが,前者は集団的自衛権を認める安保法制に賛成で後者は反対です。
前者は,戦争は台風と同じであり,憲法で台風は防げないと,人の意見を引いていました。天災だから備えなくてはならないと。右派の思考の一片を窺い知る事が出来ました。他にも参考になる意見がありました。
何も考えないので,ポンポンと発言が出るのだと再認識しました。
by Enrique (2015-10-17 11:54) 

Enrique

補足です。ツマグロの♀で間違いないですね。♀は特徴的で分かりやすいです。褄黒の名称もここから来ています。
by Enrique (2015-10-17 11:56) 

momotaro

Enrique 様
ご訪問並びにコメントありがとうございます。
> 戦争は台風と同じで…天災だから備えなくてはならない
との石原さんの意見、あの人たちの考え方が窺えますよね。
どうすればなくなるか、またなくせるかという発想がひとつもない。
それを現実主義と称して、現状肯定派の論客としてちやほやされ、居丈高になってしまう。理屈を言うだけ始末が悪いですよね。

ツマグロの解説ありがとうございました。♀のほうが見かけることが少ないように思います。
by momotaro (2015-10-17 14:23) 

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